2007年 1月 28日（日）

• 『週刊金曜日（07/1/19）』より。「2007子どもを救え　特集・追い詰められる教師たち」
  • 管理強化により、先生の仕事は忙しくなった（P11-、高橋誠「健康調査　浮かび上がる過酷な日常　教師の悲鳴が聞こえる」）
    ●小・中学校の教職員の約２割で時間外労働が月８０時間を超える
    　学校内外での超過勤務や持ち帰り仕事が月４０時間を超えているのは、小・中・高等学校では過半数を占めている。なんと月８０時間を超えているのは、小・中学校の教員の約２割に及んでいる。こうした時間外労働時間の実態は、過酷というほかない。
    　厚生労働省の過重労働による健康障害防止のための新総合対策（２００６年）では、時間外労働が２〜６月平均で月４５時間を超えて長くなるほど健康障害のリスクが高まるとされている。月８０時間を超えると、健康障害のリスクが非常に高くなる。…
    ●１日２時間以上の持ち帰り仕事によって過半数が睡眠時間６時間未満に
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  • 「旧教育基本法を教育宣言として残す」という素晴らしいアイデア（P14-、座談会「いま学校で何が起きているのか　子どもと向き合うことを奪われた教員たち」）
    福田雅章　教職員の休職者数は１０年で３倍です。なかでも目立つのは鬱病などの精神疾患で、前年より１７％増。いったい学校で何が起こっているのでしょう。教育基本法「改正」を先取りした「改革」が進む東京都の現状から教えてください。
    深澤裕　とにかく教員間の交流がなく、和気あいあいとチームを組んでやっていく雰囲気が皆無。一人ひとりの教員が孤立しています。人事考課がはじまり数値目標を持たされて競争させられるようになったため、自分のことだけで精一杯です。
    　職員室でも、週案（集指導計画案）など書類作成が必要な仕事が増えましたから各々がパソコンに向かって仕事をしています。飲み会などもなくなり、悩みや不満をはき出す機会もありません。
    金崎満　東京都教育委員会（都教委）によって職員会議が校長の補助機関に、運営委員会が企画調整会議にされてしまったことも大きいでしょう。職員会議では、管理職等が決めた内容が伝達されるだけ。子どもを中心に置いて自由闊達に意見を言い合うことがなくなりました。職員会議を廃止した学校もあります。
    伏見忠　異動期間が３年になったことも一因では？　毎年ほぼ３分の１の教員が入れ替わるので、なかなかチームワークを取れない。ようやく慣れてきたころ、また異動ですからね。しかも、異動は校長権限。自ずと校長ににらまれるような動きはできなくなります。
    青木重雄　学校によって状況はまちまちですが、多かれ少なかれ教職員が集団として機能できなくなってきています。いつの間にか締め付けられることに慣れてしまい、意見を言わず命令に従うことが当たり前になってしまったような感があります。…
    伏見　本当にいじめ対策をするというなら、少人数学級にすることこそ有効だと思うのですが。
    深澤　石原慎太郎都知事は、「東京オリンピックのために毎年１０００億円積み立てる」と言っています。でも３００億円くらいあれば、３０人学級がつくれるそうです。少しは子どもたちのためにも、お金を使ってほしいですよね。
    青木　本当にそうです。いじめはとてもデリケートな問題。いじめ・いじめられの関係も、低学年であればあるほど入り組んでいて傍目には分かりにくい。少なくとも、物を壊すとか授業を聞かないなどの、いわゆる校内暴力と同じ感覚で対策を取れるようなものではない。 …
    青木　私は教育基本法を取り戻す運動が今後、必要だと思います。改正前の教育基本法を教育宣言のような形で残せないかと。残されていれば生かすことができます。自分が取り組んでいる裁判は憲法や子どもの権利条約も使い、教育基本法を取り戻す裁判にしなければと思います。
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  • 国会の審査を通っていない改正教育基本法（P18-、世取山洋介「改正教育基本法　「人格の完成」はどこに？　“公共性”なき法律は具体化されるのか」）
    　新自由主義教育改革が、（１）富裕な家族層にとって有利に働かざるをえず、したがって格差を拡大、固定化するものであること、そして、（２）国連子どもの権利委員会によって指摘されている高度に競争主義的な教育制度が子どもの発達に歪みをもたらしている教育制度をさらに悪化させるものであることを野党から質されても政府はそれを否定できず、弊害の発生を抑制するためのささやかな自己抑制（たとえば学校ごとの成績公表を自治体に義務付けない）を表明するのが精一杯なのであった。
    　新国家主義教育改革については、いじめ、不登校問題の克服という公共的な課題を解決するための手段としての規範意識の強化という政府による便法も、その原因である競争主義的教育制度をさらに競争主義的なものにするとのプランのもとで、説得力を失っていた。
    　衆議院教育基本法に関する特別委員会における与党の単独採決、そして参議院同委員会における与党の強行採決という経過をたどることになったのは、政府案がそもそも国会審議の要諦である公共性の審査をパスしえないからであったと言える。…
    　国会審議で露呈した改正法における教育立法が備えるべき公共性の不在は、改正法の具体化のすべての場面で繰り返し問われることになる。
    　子どもの全面的発達は憲法１３条の個人の尊厳原理から導かれる憲法的要請でもあるので、憲法「改正」が実現しない限りは改正法の具体化は、常に違憲の評価と隣り合わせとならざるをえないのである。
    ↓
    先生方を追い込むと、子どもたちも追い込むことになるのですが、自民党も公明党も安倍晋三も石原慎太郎も、全く理解できていないようですね。 いや、子どもたちを追い込むために、あえて先生方を追い込んでいるのだとしたら（分かっていて強行しているのだとしたら）、こういった輩（自民・公明・安倍・石原）こそ、本当の売国奴でしょう。日本の将来を何だと思っているのでしょうか。
    「日本国内の富裕層のみを優遇する」なんていう利己的な政策をしているから、インド・中国に追い抜かれるのですよ。例えば、インドでは貧乏でも優秀な学生には無償（またはそれに近い負担）で教育の機会を与え、世界に通用する人材を育てています。しかも、半世紀前から一貫して国を挙げて行っているところに先見の明がありますね。無償に近い負担で高度な教育を受けられたら、自然に「愛国心」は芽生えてくるでしょう。日本のように、先に「愛国心」を強制するだけでは、その強制に対する反発心が芽生えるのが関の山。
    国益という視点から考えると、現在の日本の「保守陣営」の教育政策は後ろ向きで、閉鎖的で、視野が狭すぎ、明らかに「間違っている」と言わざるを得ません。

2007年 1月 19日（金）

• 『週刊金曜日（07/1/12）』より。
  • いま、考えるべきは「暴力の運動」だ（P56-、ナビゲーター・本橋哲也「格闘する思考　萱野稔人（上）」）
    ●暴力の運動としての国家の歴史を繙く
    萱野　まず、国家の一番の特徴はどこにあるのかというと、国家だけが社会の中で合法的に暴力を使うことができるという点です。逮捕する、戦争する、あるいは刑罰を与える──。ではなぜ国家だけが暴力を合法的に使うことができるのか。それは決して、人々の生命や財産を守るという「正しい目的」がはじめにあったからではありません。「勝てば官軍」と同じで、１つの集団が他の個人や集団の用いる暴力を「違法だ」といって抑え込むことができるようになることではじめて、国家だけが暴力を用いることができるという状態が生まれた。これは歴史的にも論理的にもいえることです。暴力によって暴力を抑え込むという運動がまずはあるわけです。
    本橋　一番力の強いものが正当性を主張するということですか。
    萱野　そうです。力の論理がまずあり、その後にそれを正当化するものとして道徳が出てくる。つまり国家というのは、暴力で暴力を抑えるという運動の長い歴史の中から生まれてきた１つの結果なのであり、国家の基盤にはさらに暴力の歴史がある。だから暴力のあり方が変われば国家のあり方も変わる。現在の国民国家といえども国家の最終的な形態ではありません。…
    ●ナショナリズムは民主主義の一側面 …
    萱野　０５年秋の“郵政民営化選挙”を例にしましょう。なぜこのとき多くの国民は小泉自民党を支持したか。郵貯・簡保に集まった国民のカネが財政投融資を通じて無駄な公共事業に使われ、その過程で政治家や官僚、土建業者が利権を手にする、そうした構造をなくさなくてはならない、という理由からでした。つまりそこには平等主義的な国民意識があった。が、いざ民営化がなされてみると利権の構造そのものは別のかたちに移し変えられただけでした。そのうえ郵貯・簡保のカネが一般市場へと回されることで、国民のカネが大きな市場リスクにさらされることになった。つまり国民の平等主義が、社会をより不安定化させるような利権構造の再編成にうまく利用されたわけです。
    本橋　でもそれは国民自身の要望でもあったわけでしょう。現在のネオ・ナショナリズム勃興は私たち自身が望んでナショナリズム強化の方向に向かっているように見える。私たちの多くは損することの方が多いのに、なぜそれを求めてしまうのか。…
    ●アイデンティティを通じた排除 …
    萱野　…先ほどの郵政民営化の話でいえば利権を許さないという国民の平等主義が新しい利権の構造をつくりだすために利用される、という逆説が起こりました。なぜそういうことが起こるかというと、ナショナリズムは国民の同質性や、国家と国民の一体性といったものを自明視するあまり、その内部にある権力関係や、国家と住民の間にある利害のズレを見ることができなくなってしまうからです。ナショナリズムが生活環境の悪化を国民道徳により乗り切れると考えてしまうのも同じ理由からです。
    　ナショナリズムの逆説はまた、国家の暴力の民主化においても存在します。確かにナショナリズムは「国家は国民のためのものだ」という規範を掲げることで、国家の暴力が特定の支配者によって恣意的に用いられることを制限し、民衆が国家の暴力を曲がりなりにもコントロールする可能性を開きました。
    　が、これは他方、国民全体で担われた巨大な暴力が出現することとパラレルでした。国家の暴力は国民のためのものということになった途端、その暴力は国民的なアイデンティティを守るための全体的なものとなる。ファシズムにおける全面戦争の経験はその最も過激な現れです。
    本橋　アイデンティティを守れ、国民を守れということになるから、敵は単に政治的な敵ではなく、異教徒とか移民労働者とか、自分たちのアイデンティティを脅かす者になってくるのですね。
    萱野　そうです。政治的な目的を達成するという以上の役割が国家の暴力に期待されるようになるのです。ここには、暴力をコントロールすることが同時に暴力をヒステリー化させる、というナショナリズムの逆説がある。その逆説を超え、暴力をいかにコントロールしていくのかという問いが出されなくてはなりません。
    ↓
    本橋氏は（現在のネオ・ナショナリズム勃興は）「国民自身の要望」という言い方をしていますが、ネオ・ナショナリズムの本当の姿を多くの国民は知らされていない（で、雰囲気で小泉自民党に投票してしまった）というのが実態では？　日本が戦争へ向かって準備しているなんて、ほとんどの国民は知らないよ。
    結局、社会の神経系の役割を果たすマスコミが正しく機能していないため、体（＝社会）のあちこちに無理がたたって病巣ができてしまっている状態。しかも、それにすら気付かず（痛みの情報が伝達されず）、よたよたと歩き続けている（でも、もう倒れそう…）ということなのでしょう。
    なお、ナショナリズムは国家内の階級（権力者と一般市民が存在すること）を隠蔽する方向に働きますから、必然的に、一般市民の「痛みの情報」が伝達されないといった弊害が出て来ます。もちろん、こうした「実態と異なる誤った現状認識」が、その国家体制を崩壊させることにもつながるわけですが…（こうして我が国は第２次大戦において敗戦した）。
    どの国の権力者も、自分の立場が危なくなってきたら、「ナショナリズム」などのバリアを張って、一般市民の目をくらまし、自分の「オイシイ立場」を必死で守ろうとするものです。このことは忘れない方が良いでしょうね。

2007年 1月 1日（月）

• ネット君臨：難病児募金あざける「祭り」（毎日新聞・朝刊）
  　新聞各紙に「さくらちゃんを救う会」の募金活動の記事が掲載された昨年９月２２日朝。インターネット掲示板「２ちゃんねる（２ｃｈ）」に家族を中傷する匿名の書き込みが始まる。「また死ぬ死ぬ詐欺ですかｗ」。「ｗ」は笑いの意味だ。移植の募金はこれまでも「会計が不透明」と批判されてきた。…
  　両親が借金などでねん出した３０００万円の自己負担を公表しても攻撃はやまない。ローンが残る住宅しかないのに「十数億円の資産がある大地主」と虚偽の情報が書き込まれた。自宅の登記簿や写真もネット上にさらされた。「だまされて募金したので返してほしい」。救う会にはメールや電話が続いた。…
  　年の瀬の東京・渋谷。記者はネット上のハンドルネーム（ＨＮ）「がんだるふ」を名乗る男に会った。元大手フィルムメーカー社員。今はイベントプロデューサーという。５８歳。募金批判の中心人物だ。
  
  −−募金を払わなければいいだけなのに、なぜ攻撃するのか。
  ◆臓器移植問題は深いのに「かわいそう」で思考停止になっている。募金は物ごいと一緒だ。
  −−書き込みには中傷や誤報がある。
  ◆ネット上の罵詈（ばり）雑言はノイズ。被害と感じるのは弱いからだ。
  −−匿名での攻撃はアンフェアでは。
  ◆名前は記号。本質は書いた内容にある。
  −−実名でも書ける？
  ◆それは書けます。
  −−実名記事にしたいが。
  ◆載せないでほしい。「がんだるふ」というネット上の人格でやってきたから。
  ↓
  「実名でも書ける」のに「載せないでほしい」ですか…。そんなに自信があるのなら、毎日新聞上で、実名とハンドルネームを併記すれば良いのに…（そして、自分の個人情報を２ｃｈ上でさらされても「ネット上の罵詈（ばり）雑言はノイズ。被害と感じるのは弱いからだ。」と言えなければウソになりますね）。
  結局この手の「攻撃」は、権力（本当に悪事を働いている政治家たち）に向かうことはないんですよね。自分たちと同じ１市民を「攻撃」しているだけ（参考：市長も市長なら、読売も読売だ）。そんなことをしている間にも、「本当の敵」はますます増長していくのですが…。
  現状では、２ちゃんねらー達は、安全な場所で「いじめ」を楽しんでいるようにしか見えません（最近、特にレベルが下がっているのは、参加者のレベルが下がっているからなのでしょう）。
  なお、
  （２ｃｈ管理人の）ひろゆき氏は毎日新聞の取材に「賠償命令は総額で四、五千万円くらいある」と語った。１億を超える年収があると認め、こう明かした。「役員報酬とかそういう形ではもらってない。どこかの会社から給料としてもらっている。それがどこか分かると差し押さえられるので（カネの流れを）常時動かしている」（毎日新聞・朝刊）
  これは「払わなければならないのに、逃げ続けている」ということでしょうか。興味深い情報ですね。