2007年 3月 31日（土）

• 社説：教科書検定　沖縄戦悲劇の本質を見誤るな（毎日新聞・朝刊）
  　文部科学省の教科書検定・高校日本史で、沖縄戦の記述に相次いで検定意見が付き、表現が修正された。戦いのさなかに各地で起きた住民の集団自決について、日本軍によって強制されたり、追い込まれたりしたとするのを「軍の強制は明らかとはいえない」という理由で改めさせたのだ。
  　元軍人の裁判や強制に否定的な出版物などがきっかけになったというが、これについての文科省の見解の転換は初めてとみられ、波紋は大きい。
  　まず気になるのは、「強制」についての考え方だ。
  　個々の惨劇に系統だった「命令」のような記録は残らない。しかし、軍から食糧を奪われ、避難壕（ごう）からも追い出された住民たちは「鉄の暴風」といわれた砲爆撃の野にさまよい、そうした人々が集団自決にも追い込まれた。
  　１９４５年春、硫黄島陥落の後始まった沖縄戦で、日本軍守備隊は基本的に持久戦法を採用し、「敵を引きつけ、本土進攻を遅らせる」時間稼ぎに努めた。
  　例えば、沖縄本島の主な激戦地は南部で、当初、一般住民は九州本土や本島北部に疎開させる計画もあったが十分に進まず、ついに日本国内で初めて住民を無制限に巻き込んだ地上戦を３カ月にわたって展開することになった。
  　守備隊の作戦の最大の目的は「本土決戦準備」の時間を少しでも長くすることであり、「住民保護」の態勢や発想は薄い。要とした首里戦線が持ちこたえられず、軍がここを放棄して本島南端に向かって退却を始めたころから、住民の犠牲者は急増した。
  　また将兵はもとより、住民たちも「投降」は考えることも許されなかった。日本中がそう教育され、刷り込まれていた時代である。軍は雪崩を打つように南へ敗走し、最終段階では軍属の人々も放置して崩壊した。
  　こうした流れや無責任な全体状況は、死を選ぶしかないほど人々の心身を追い込んだとみることもでき、「強制は明らかでない」と言い切れるものだろうか。
  　また沖縄戦は、ここから歴史、社会、地理、文化などさまざまな学習テーマを見いだすことができる。次世代が学び継いでいくべき内容は尽きない。だが総じて教科書では切り詰めた書き方になる。学習指導要領に沿って編集される検定教科書はどうしても「項目にできるだけ漏れのない」均等割り的な記述になりやすい。
  　いっそのこと、高校では検定を廃止し、教材を学校・教師・生徒に任せることを検討してみてはどうだろうか。例えば、沖縄戦を一つの核にして、学習テーマを総合的に広げていくという長期授業の試みがあってもいい。
  　昨秋明らかになった大量履修不足問題は、大学入試に関係なければ歴史学習に関心や意欲がわかないという高校生が少なくないことを示した。指導要領にも問題がある。新しい大学入試のあり方とともに、検定というタガを外した高校の教科学習を本腰を入れて考える時にきているのではないか。
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  「従軍慰安婦」に続き「沖縄戦」についても、子どもたちにウソの歴史を教え込もうとしていますね。＞日本政府
  自国（正確には「現在の政府」）にとって都合の悪い歴史的事実を隠そうとするのは、まだ日本が二流国である証拠です（北朝鮮みたいだな…）。事実を知らないと、それを乗り越えることができず、いつまでたっても同じ過ちを繰り返すことになるのですが、自民党・公明党といった現在の権力者たちには、先を読む力が絶望的に欠けているようです。
  いや、（今の子どもたちが将来、参加するであろう）次の戦争のための「準備」の一環と捉えているのであれば、戦争の大好きな自民党・公明党は「先を読んで行動している」とも言えるわけですが…。
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• 『週刊金曜日（07/3/23）』より。
  • 三島由紀夫に嫌われた石原慎太郎（P10-、対談　田中優子・佐高信「小人が知事になると不善を為す」）
    佐高　…矢崎泰久さんが書いています。三島由紀夫が「文学者としての僕は石原君との同席に耐えられません」と言ったと。石原氏との対談をもちかけられた三島由紀夫は「僕は文学者です。政治屋に堕落した人間とは口もききたくはないという心境です。石原君が文学者として話したいというのなら多少の余地はあるかもしれないけれども、新聞を読んだ限り、別の世界の人間だ。接点がない限りこの対談は無意味ですよ」と断ったとあります。三島の評価は別として、文学者からのはっきりとした決別ですね。でも、こうした側面は伝わってなくて、文化を分かる人間という残像だけがある。
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    「フランス語は数を勘定できない言葉だ」などといった滅茶苦茶な発言をしてきた石原慎太郎には、「文化を分かる人間という残像」すら全くないと思ってました（笑）。
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  • こんなところにもあった、安倍晋三の嘘（P14、吉田有里「自民を責める絶好の機会を「同じ穴の狢」が潰す民主　これじゃ信頼できないでしょ」）
    　２月２６日付『朝日新聞』の「歴史と向き合う」を読んだ時、事実の前にひれ伏す、そんな思いがした。安倍晋三首相は、著書『美しい国へ』の中で、「たしかに自分のいのちは大切なものである。しかし、ときにはそれをなげうっても守るべき価値が存在するのだ、ということを考えたことがあるだろうか」と問いかけ、それを体現した存在として、「如何にして死を飾らむか」「如何にして最も気高く最も美しく死せむか」と書き残した特攻隊員鷲尾克己少尉の日記を紹介している。
    　ところが豊秀一記者が日記を読み進めると、安倍晋三首相が美化した部分を書いた約４カ月後に鷲尾少尉は、「気高く死ぬる必要なし」「美しく死ぬる必要なし」と、全く違った言葉を吐露していたのだ。
    　この国では、不戦のためにと教えたはずの特攻隊の事実は、子どもたちに「お国のために死ぬ」という言葉と感覚を否応なしに刷り込んでいく。私自身も、その１人だ。しかし、どこかで違和感を持っていた。私は、あんな風に達観して国のために死ねるのだろうか、と。
    　事実は違っていた。鷲尾少尉は、最後の最後まで命じる国を問い、もがき、苦悩した。そして最後に、明らかに狂った国家が求めてくる非情な命令を受け入れるしかなかったのだ。その姿にこそ、私のような者にも通じる何かを見出すことができる気がした。
    　豊記者が明らかにした事実は、他人事のように、国家のための死を「美しいもの」にできる安倍首相の欺瞞と浅はかさを明らかにした。そして、事実を闘わせる政治に身をおく者として、私自身も「事実の前に謙虚にならなくては」と、改めて痛感した次第だ。
    ↓
    明らかに狂った国家が求めてくる非情な命令を受け入れるしかなかった … 命令を拒否すれば、殺されますからね（軍隊とはそういう組織です）。
    さて、現代において、本当に「愛国心」から自分の命を捨てる人がいるかもしれませんが、その考え方を他人に強要することは絶対に間違っています（徴兵による軍隊組織も、現代的自由主義思想とは相容れないものです）。
    ちなみに、厚顔無恥の政治家連中は、口先では「愛国心」を唱えていても、真っ先に自分の命を捨てて国を守る気は全くありませんから、ダマされないようにしましょう。
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  • ユニークな取り組み次々と（P51、岡村青「地域あってこその国ではないのか　大領土主義に反旗〜合併拒否・矢祭町」）
    ▽土・日・祝日もない「３６５日開庁」
    　フレックスタイム導入などで役場の受付業務を延長し、早番・遅番は職員が自主的にローテーションを組んでいる。
    ▽出張役場
    　出勤前あるいは帰宅後に職員の自宅に住民が訪れ、印鑑証明や住民票、納税などの代行を依頼するシステム。交通の便が悪い山間部や高齢者世帯に大好評だ。
    ↓
    たまには明るいニュースを。
    政府が推進している「合併ブーム」の中、あえて合併を拒否した福島県東白川郡矢祭町（根本良一町長）の「地に足のついた工夫」の数々（上記は一部抜粋）。人口７０００人ほどの町が画期的な政策を推進していく姿は痛快ですね。
    実際、こうしたサービスこそが、住民が必要としているサービスなんですよね。お上の言いなりに合併している地方自治体には想像もできないでしょうが…。

2007年 3月 30日（金）

• 社説：Ａ級戦犯合祀　政府も積極的だったとは（毎日新聞・朝刊）
  　国立国会図書館が「新編靖国神社問題資料集」を公表した。この新資料からＡ級戦犯合祀（ごうし）について厚生省（現厚生労働省）と靖国神社が緊密な協議をしていたことが明らかになった。
  　Ａ級戦犯合祀は、首相の靖国神社参拝とからみ内外で論議になっている。政府は、一宗教法人である靖国神社の判断であり無関係という立場である。だが、実際は厚生省が深くかかわっていた。しかも世論の反発を恐れてひそかに神社側と協議を続けた。政教分離という憲法の原則に照らし後ろめたさがあったからと思われる。
  　だとすれば、政府がＡ級戦犯合祀問題を靖国神社だけに押し付けていいのか。今回の資料集に欠落している資料も含めて、事実関係をすべて国民に明らかにし、そのうえで、政府の見解を国民に示すのが筋だろう。
  　占領が終わってまもない１９５２年、衆参両院で戦犯釈放に関する決議が出ている。だが、新資料によれば靖国神社への合祀はそれと同時に進んだわけではなかった。厚生省、神社双方とも世論の風向きを慎重にはかっていた。
  　新資料によると、５８年に厚生省側から神社側にＢＣ級戦犯の合祀を研究するように提案している。先にＢＣ級戦犯を目立たないように合祀し、将来、Ａ級戦犯を合祀するという２段階戦略を要請したのも厚生省だった。神社側は翌年の４月と１０月、ＢＣ級戦犯を合祀した。
  　厚生省は、Ａ級戦犯の合祀とＢＣ級戦犯の合祀を別々に考えていたのではなく、初めからセットで扱い、戦術的な配慮で先発後発を分けたのである。
  　５８年１２月の総代会では、Ａ級戦犯合祀を今後検討すべきだという意見が出たが、総代の小泉信三元慶応義塾塾長が「ここで決定するのではないのですね」とほっとした表情で語ったという。当時、神社側は合祀論一色ではなかったことがうかがえる。
  　合祀をするには、厚生省が祭神名票を神社に送付し、これを神社が審査したうえで決定する。厚生省は５８年、Ａ級もＢＣ級も同時に祭神名票を作成したが、Ａ級の送付は８年後の６６年まで待った。
  　ところが神社側はすぐに合祀決定をしなかった。３年後の厚生省と神社の検討会で「合祀可、非公表」を決めながら、翌年「保留」に変えた。Ａ級戦犯合祀に神社側が抵抗していた証拠である。
  　当時の宮司は明治天皇の孫に当たる筑波藤麿氏で、昭和天皇の意向を酌んでＡ級戦犯合祀に否定的だったといわれる。新資料はその傍証となる。
  　Ａ級戦犯１４人の合祀は、筑波宮司から松平永芳宮司に代わった直後の７８年１０月、こっそりと行われた。昭和天皇が不快感をあらわにしたことは、昨年発見された富田朝彦元宮内庁長官のメモで知られる。だが、松平宮司が、なぜ、どのような手続きで合祀したのか、厚生省との打ち合わせがあったのか。新資料には、保留解除までの経過が欠落している。その空白を埋めることがまず急務である。
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  Ａ級戦犯合祀に日本政府が深く関わっていたことを示す証拠です。この期に及んで、まだ靖国神社に責任をなすりつけるとは、安倍晋三首相も自民党も見苦しいですね。自分の頭で考えることのできるまともな右翼なら、今後ますます安倍や自民への不信感を強めることでしょう。

2007年 3月 25日（日）

• 『週刊金曜日（07/3/16）』より。
  • 「慰安婦」への強制性とは、「本人の意思」に反するということ（P6、金曜アンテナ「河野談話に向き合え　「安倍発言」への怒り」）
    　従軍「慰安婦」をめぐる安倍首相の一連の発言に抗議するため、7日、東京都の参議院議員会館前で、「緊急行動『河野談話』に向き合え！　3・７全国同時水曜デモ」があり、80人余りの市民が参集した＝撮影／筆者。
    　ＶＡＷＷ―ＮＥＴジャパン共同代表の西野瑠美子氏は、「河野談話」（1993年8月）の中の「慰安婦」への強制性とは、「本人の意思」に反するということで、安倍首相が言うような「定義」が変わる余地はないと批判した。集会では、「慰安婦」本人の証言を無視する安倍政権に怒りが表明され、韓国等での同時行動が報告された。（山本英夫・フォトグラファー）
    ↓
    逆になぜ、数多くの「慰安婦」本人の証言を日本政府は無視できるのか、その根拠を知りたいところです。
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  • 「日の丸・君が代」に賛成か反対かではなく、それへの強制に賛成か反対か、が問われている（P9-、星徹「校長も教員も反対！　「日の丸・君が代」強制　都立高校卒業式“石原都教委”の大暴走」）
    「予防訴訟」や「処分取り消し訴訟」の弁護団副団長を務める澤藤統一郎弁護士は、「問題の本質は、『日の丸・君が代』に賛成か反対かではなく、それへの強制に賛成か反対か、価値観の多様性を認めるかどうかだ」
    ↓
    価値観の多様性を認めない社会は、思考も行動も硬直化し、いずれ没落していきます。
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  • 「開発病」に取り憑かれた静岡県とゼネコンの悪行（P22-、片岡伸行「自殺者も出た静岡空港の暗雲　文書公開めぐり注目の最高裁審理」）
    　２月６日午前３時１６分ごろ、静岡市にある静岡県庁別館北側の歩道上で１人の男が焼身自殺を図った。「空港はいらない静岡県民の会」事務局員の１人で、享年５８歳。石川嘉延・県知事宛てに遺書として「抗議文」を残していた。
    「農民から無理やり、権力を使って土地を取り上げ……（中略）……永久に税金を無駄遣いする空港を、嘘八百を並べ立てて、さも役に立つ空港であるかのように偽装し……（中略）……ゼネコンを使い、癒着し、県民に百年の禍根を残すその所業は赦しがたい。よって、我が命を捨ててその悪行を糾弾する」
    　基本計画案の公表（１９８９年１２月）以来、その政治手法や計画内容など数々の問題点が浮上し広範な反対運動が展開されてきた静岡空港だが、ついにその歴史に血塗られたページを加えることになった。…
    ●夢のような需要予測
    　静岡県は、開港年の年間利用者数を１３８万人（国内線１０６万人・国際線３２万人）と予測している。しかし、国内航空会社労組の横断的組織「航空連合」は年間３０万人、「静岡空港建設中止の会」は同３２万人。予測とはいえ、その隔たりはあまりにも大きい。
    　島野（房巳）さんは言う。
    「とくに誇大ぶりの目立つのが札幌便の利用者数５２万人です。立地条件が似ている広島空港が同便２５万人、小松空港が同２７万人。静岡はその約２倍を見込んでいて、無謀としか言いようがありません」
    ↓
    国内線のうち採算性の悪い路線については次々に廃止されている現在、東京へも名古屋へも近い静岡に新たな空港を建設することは、素人目に見ても、税金の無駄遣い以外の何ものでもありませんね（ああ、あと「環境破壊」もあったか…）。
    この悪政により喜ぶのはゼネコンとそれに癒着した政治家・官僚だけでしょう。
    --
  • 日本による韓国の植民地支配はまだ終わっていない（P54-、田中伸尚「韓国人遺族ら肉親の靖国合祀「絶止」求めて提訴　生きているうちに父、夫の「恨」を解きたい！」）
    　羅敬壬さんの表情に疲れが滲んでいた。朝、靖国神社を訪ね戦死した父の合祀を取消してほしいと訴えたが、神社側は裁判を前提にしているのだから、と話し合いに応じなかった。「社務所」の中に一歩も入れてもらえず、門前払いされた。悔しくて悔しくて……」。社務所の入口前で声を立てて泣いてしまった。戦死した父、羅永基さんが、家族の了解もなく、しかも創氏改名された日本名のまま、「天皇の戦争に役に立った」として神にされているのだ、と思うと内臓が引きちぎられそうだ。「父がどんな辛い思いで、祀られているのか。娘として父を連れ戻せないことが申し訳なくて」。…
    　大日本帝国によって強制動員された羅さんの死を、帝国を継承している戦後日本政府は知りながら、遺族には何も連絡しなかったのである。このように韓国の戦死者については、日本政府から個々の遺族には報告はされていない。今度の訴訟の請求趣旨に、日本政府に「戦死の事実を相当の礼をもって報告せよ」などと求めているのはそのためである。日本人戦死者の場合は、「死亡通知」は各遺族に知らされている。…
    ●父を植民地支配から自由に …
    　５２年４月に戦傷病者戦没者遺族等援護法が制定され、５３年８月には恩給法が改定されて軍人恩給が復活した。これによって日本人軍人・軍属の戦死者遺族らは、さまざまな経済的援助を受けられるようになった。しかし遺族等援護法は附則で、また恩給法は国籍条項によって旧植民地出身者を排除し、補償から除外し、その一方で靖国神社の合祀には全面協力していた。
    「国籍が違うから、補償しないというのなら、合祀も外してください。今もまだ、父は植民地支配によって囚われているように思います。故郷に、母や娘のところに帰りたかっただろう父のことを想うとたまらないんですよ」。敬壬さんの＜恨＞は、話しているうちにいや増してくる。
    　韓国（台湾）人遺族らの合祀取消しには、日本人遺族が求めているそれと、死者の追悼の自由など重なる面は多いが、植民地支配と戦争・戦後責任が、未決であるという問いを含んでいるところは異なる。
    　弁護団の１人、大口昭彦弁護士は旧植民地出身者の合祀問題についてこう指摘する。
    「補償については国籍が違うといって排除し、合祀は死んだときは日本人だったからという。ダブルスタンダードです。合祀は、隣国の友人たちを苦しめている」
    ↓
    本当に日本が、外国から尊敬される国を目指すのであれば、
    ・韓国人など旧植民地出身者（強制動員された外国人）にも日本人と同等の補償を行う。
    ・靖国神社への合祀は任意とし、遺族の意思を尊重する。
    この２点は守るべきでしょう。
    現実には２点とも反対の状況にありますが、外国から見ると「日本という国は、何と内向きの（自分勝手な）国だろう」と思われます。

2007年 3月 17日（土）

• 『週刊金曜日（07/3/9）』より。
  • 朝鮮総連に対する異常な弾圧（P8-、本誌取材班「シリーズ・警察の闇　「市民社会の敵」が暴走する」）
    （１）「生物兵器」に結びつけられた在日女性の薬
    　北朝鮮（朝鮮民主主義人民共和国）で医師を営む息子と会うため、東京都世田谷区の在日朝鮮人女性Ａさん（74歳）が祖国を訪問したのは昨年５月１９日。だが、新潟港から「万景峰92」号に乗船する前日、ちょっとしたトラブルが起きた。
    　Ａさんは事前に、「北」訪問にあたっての出入国事務を扱う「祖国訪問新潟出張所」に自宅から渡航用の荷物を発送。だが税関から、中にあった肝臓疾患用薬品「強力ネオミノファーゲンＣ」１２０アンプルと点滴液の「強力モリアミンＳ」６０パック（１パック200ml）のうち、後者が「量が多すぎる」と言われた。
    　数年前にＡさんは甲状腺がんと婦人病を患って手術し、以来こうした薬を使用していたが、これまで何度か祖国を訪問した際には「強力モリアミンＳ」について何も言われなかった。このため、税関に対し「前回の訪問時に体調を崩して２カ月以上滞在したことがあり、病気再発に備え肝臓の悪い息子にあげる分も含めて多めに６０パック持参した」と説明。税関側は「人道上の観点」から５パックだけ渡し、残りの５５パックは自宅に送り返させた。
    　以後、格別の問題も生ぜず、Ａさんは無事同月３０日に帰国している。ところが半年近くたった昨年１１月２７日、突然十数人の警視庁の捜査員によって実に９時間も自宅を捜索された。容疑は、近所のかかりつけの医師が祖国訪問で持参した薬を処方箋なしで直接Ａさんに売ったのが薬事法違反にあたり、Ａさんはそれを「教唆」したのだという。…
    　一方マスコミ各紙は、公安と連動した正体不明の怪情報を流し続けた。『産経』は何と家宅捜索があった当日朝の１１月２７日付１面トップに、「点滴液大量輸出図る　生物兵器に転用可能」という見出しが。「強力モリアミンＳ」を指すと見られる「点滴薬」は、「警察当局によると、アミノ酸点滴薬からアミノ酸を抽出して細菌培養に応用することは技術的に可能で、生物兵器開発に利用される恐れがある」などと恐ろしげだ。
    　だがわざわざ「抽出」しなくとも、「アミノ酸」はサプリメントとしても大量に出回っている。処方箋が必要な薬品でなければならない理由の説明はない。しかもＡさんは個人的に使用するために持参し、新潟税関もその事実を認めているのになぜ「輸出」なのか。かりに「輸出」が問題だったら、当然薬事法ではなく関税法が適用されるはずだ。しかも手続きさえ整えれば、「強力モリアミンＳ」が北朝鮮に「輸出」されたとしても、違法でも何でもない。…
    　また同日の『毎日』夕刊によれば、「強力ネオミノファーゲンＣ」について「専門家によると、被ばくしたＤＮＡ遺伝子の破壊を防ぐ実験に利用された」という。だが製造元のミノファーゲン製薬の広報によると、「これは肝臓薬ですから、放射能に伴う症状に有効などという話はまったく聞いたことがない」と語る。
    　公安が一女性の「薬事法違反・教唆」容疑に引っかけて朝鮮総連にダメージを与えるため、「生物兵器」だの「核開発」だのと国民がいかにも恐怖を抱くような題材に無理やり結びつけ、公安と癒着した記者がそれに乗ってあることないこと書きなぐった──というのが実態だろう。
    ↓
    やはりこれも、「あるある」や「ゲーム脳」と同列の、ニセ科学問題の一種ですね。
    「どうせ読者や視聴者は素人で分からないだろうから、テキトーに科学的な言葉で飾り立てておけば誤魔化せるだろう」という情報発信側の無責任。いや単なる無責任ではなく、国民をある方向へ意図的に誘導しようとしている点で、非常に悪質な犯罪であると言えましょう。

2007年 3月 11日（日）

• 『週刊金曜日（07/3/2）』より。
  • 石原慎太郎・東京都知事の仕事術（P16-、本誌取材班「石原慎太郎の本性「枯渇するブレーンと右派人脈」」）
    …いわばブレーンの使い捨て状態である。
    　そのさまは、新銀行東京をみてもわかる。血税１０００億円を注ぎ込み０５年４月にスタートした鳴り物入り銀行の２年目上期の純損失が１５４億円ともなれば、トヨタ出身でトーメン副社長も務めた代表執行役の仁司泰正の首さえも容赦なくすげ替えるだろう。
    　新銀行東京の場合は半数の役員が沈没船から逃げ出すネズミのようにすでに退任しているほどだ。
    　そして気がつけば、石原の周りは、ほとんど身内といえるスタッフのみになった。
    　たとえば、税金１２億円を投入した東京マラソン。石原都知事の発案のように言われているが、これは高井英樹特別秘書のアイデア。
    「田園調布の石原邸の近くに実家があり、四男の画家・石原延啓とはニューヨーク大学留学時代の親友で、身内のようなもの」（都庁詰め記者）
    　どうやら、いまの都政は石原の数少ない人脈で存続しているというのだ。…
    　なぜブレーンがかくも減ったのかといえば、 石原の政策のつまみ食いがその要因に挙げられるという。政治評論家が解説する。
    「そもそも石原は自分の頭で考えない。宿題を都庁官僚に投げて外形標準課税がでてきたのがいい例です。自衛隊を動員した地震対策総合大演習は中曽根康弘のアイデア、そしてそのための参与として送り込まれたのが志方俊之といった具合。
    　石原が考えるのは『国を困らせることができるか』『マスコミが騒ぐかどうか』だけなんです。多くの政策は近辺の人間とご飯でも食べながらインスパイアされる。それを疑うことなく信じる。気が付けば、石原は人のアイデアを自分のもののように語るようになる。そして構想をブチあげるが、本質を理解しないまま進めるため、頓挫する。そこでその構想の発案者への風当たりが強くなる、といった悪循環です 」
    　国会議員になる前の石原は「相撲を八百長だ」と指摘し、日本相撲協会に名誉毀損で告訴された事件を起こしている。その際も実は一緒に相撲を見ていた知人から「（八百長だと）見る人がみればわかる」と言われたのを真に受けての失言という。
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    石原慎太郎は都民から預かった血税を私的に流用しているだけではなく、公的な仕事においても無駄遣いばかりしていますが、しかもそれらアイデアも実は「盗作」だったというわけですね。
    「石原都知事が自衛隊の戦車に乗って都内を走行する」のパフォーマンスで得意満面だった「地震対策総合大演習」すら中曽根康弘のアイデアだったとは…。
    しかも、戦後の日本を根底から破壊した主犯格の中曽根康弘のアイデアに乗るあたり、本当に「自分の頭で考えない」のですね。＞石原慎太郎
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  • 劇作家・演出家の現場主義に学べ（P52-、対談：横内謙介×平田オリザ「アジアの人たちとちょっとずつ仲良く」）
    平田　僕、大学の学生たちに、韓国や中国を別に好きになってくれなくてもいいよと、よく言うんです。僕は韓国と腐れ縁だから、好きになってくれたほうがいいんだけれど。ただ、隣の国だから、どうにかしてうまくやっていかなければならないじゃないですか。ずっとこの先も。その時に相手のいやがることはあんまりしないというのは、隣近所のつきあいのとき、普通のことでしょう。マンションで隣の部屋に住んでいる人がサンマの煙が嫌いなら、煙のでない魚を焼こうとか。そういう柔軟性は私たちの側も持つべきだと思う。
    　たとえば、靖国に行く、行かないのときも、行きたい人もいるでしょう、それは。だけど、がまんしろよ、って。イデオロギーとしての靖国問題とは別に、つきあいの上で、我慢するということも、僕は大事なことだと思っている。まさに現場主義みたいなことで。それもまさに日本の外交がまったく経験してこなかったことでしょう。欧米以外の近隣の国と対等な関係でいろんなことを妥協したりとか、譲り合ったりとか、してこなかったから。これはイデオロギーと全然関係ないと思うんですね。日本は右も左もイデオロギーだから、譲れなくなっちゃうと思うんです。それで、本当に大事なことを見失っちゃったりする。少なくとも私たち芸術とか、文化に関わっている人間は、もっと現実的にやっていた方がいい──。というか、そうせざるを得ないよね。
    横内　われわれは現場主義です。
    平田　だからこそ　文化交流の価値があるんだと思います。
    ↓
    「相手がいやがることを（わかっていて）平気で行う」というのは、幼稚な証拠です。
    現実に韓国人や中国人とつきあいのある日本人なら大きく判断を誤ることはないのですが、直接的なつきあいがない人ほどマスコミやインターネットの作り出した間接的な「ネガティブ・イメージ」に踊らされて攻撃的な言動に走る──という情けない現実がありますね。
    日本国内だけの問題ならばともかく、現実にアジア各国の人々とつきあいのある日本人にとっては、大いに迷惑な話ですよ。外国から見た日本のイメージが必要以上に悪くなりますから。しかも、この「日本イメージ悪化」の張本人が「愛国心」を語るから始末が悪い。偏狭なニセ「愛国心」など百害あって一利なし！

2007年 3月 6日（火）

• 『週刊金曜日（07/2/23）』より。
  • ＮＨＫの受信契約に法的瑕疵（P8-、丸山昇「相変わらずの「海老沢なき海老沢体制」?!　ＮＨＫ受信料不払いの「理由」」）
    　ＮＨＫは、受信契約を交わした以上、法的手続きを経て、受信料の強制徴収もできるという姿勢だ。しかし、「契約書」を保存している視聴者は、どれほどいるだろうか。ＮＨＫも、古いものは保存していない、との未確認情報もある。
    　実際の契約書は、「放送受信契約書」と「住所変更届」が一体となった、簡単なものだ。右上に極めて小さな文字で、《１．放送法、放送受信規約により放送受信契約を締結します》と、《２．住所を変更したので届けます》という表記があり、どちらかに丸をつける。あとは住所、氏名、電話番号を書き入れ、捺印するだけ。
    　しかし、「放送法」と「放送受信規約」の交付を受け、説明を聞いた視聴者は、どれほどいるだろうか。ＮＨＫ広報局は、十分に説明して理解を得ているし、受信規約や受信料制度などをまとめたパンフレットを渡しているとしているが──。
    　いずれにしても《放送法により》との記載は、大きな意味をもつ。「放送法」には、放送の「政治的公平」や、「報道は事実を曲げないこと」などが、定められている。つまり受信契約は、受信者の契約義務と、ＮＨＫの放送法遵守義務が、ともに果たされることで成立する。これは「双務契約」であり、個々の受信契約上も、ＮＨＫが放送法を守るべき義務を負うという考え方だ。したがってＮＨＫが、その義務を怠れば、受信料の支払いを留保し、抗弁することもできるという論理が成り立つ。
    　さらに「ＮＨＫ受信料支払い停止運動の会」（２月８日解散）を牽引してきた共同代表の醍醐聰・東京大学大学院教授は、こう話す。
    「消費者契約法によれば、事業者は、契約締結の相手方に、どういう権利や義務があるのか、説明するようにと謳われています。そこが大切なところです。説明するためには、受信契約者の義務ばかりでなく、権利についても、契約書に明記しておくべきです。そこのところが、まったくなされていません。そもそも（受信契約者の）権利が、（契約書に）謳われていないとすると、消費者契約法の施行以来、そこは重大な瑕疵があることになると思います。『停止の会』を解散して、『ＮＨＫを監視・激励する視聴者コミュニティ』を発足させましたが、今後も受信料支払い義務化の反対と合わせ、受信契約者の権利強化を呼びかけていきます」
    　消費者契約法は、消費者の利益の擁護を図ることを目的とし、２０００年５月に成立した。その第３条（事業者及び消費者の努力）第１項の後段には、こうある。
    《（事業者は）消費者契約の締結について勧誘をするに際しては、消費者の理解を深めるために、消費者の権利義務その他の消費者契約の内容についての必要な情報を提供するよう努めなければならない》
    　ＮＨＫは、本気で消費者（視聴者）の方に顔も向けなければいけない。
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    双務契約である以上、放送内容が「政治的に公平ではない場合」や「事実と異なる報道を行った場合」には、ＮＨＫ側が契約を履行していないことになるわけですから、当然、受信者側で受信料を支払う必要もなくなる、という論理ですね。
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  • 裁判員制度のフォーラムと広報に重大疑惑（P22-、本誌取材班「最高裁、法律違反の「さかのぼり契約」認める」）
    ●“契約日”の翌日にフォーラムを開催
    　最高裁の内部資料などによると、昨年度のフォーラム事業で電通が最高裁に「見積書」を出したのは２００５年９月２８日だった。「契約書」が結ばれた日付は、わずかその２日後の９月３０日付け。しかも、翌日の１０月１日に第１回のフォーラムが群馬県前橋市（上毛新聞社など主催）と福岡県福岡市（西日本新聞社など主催）で開かれている。
    　きわめて不自然だ。フォーラムが開かれてきた会場の定員は、２４０人〜７５０人。少なくとも数ヶ月前でなくては数ヶ月前でなくては押さえることは不可能だろう。それは、出演者への交渉や参加者の募集にしても同じで、契約した翌日に開けるような催しではない。
    　本誌の疑問に対し、電通は「企画競争の結果、平成17年6月13日付けで当社が採用通知をいただいた」（広報室）、最高裁は「採用する企画の選定後、実施の詳細について調整し、その内容を詰めた上で契約金額を定め、契約を締結したものである。そのため、見積書提出日、契約締結日、第１回フォーラム実施日が近いものとなっている」（広報課）と２月１３日に文書で回答した。
    　ところがその翌１４日、衆議院予算委員会で、最高裁の小池裕・経理局長が「９月３０日よりも後にその契約書面を作った可能性が高い。その当時はまだ前任者がやっておりましたのであれですけれども、そうとらえています」と答弁したのだ。
    　これは、いわゆる「さかのぼり契約」ではないか。契約内容や金額の変更が予想されるような場合などに契約書を作成せず、金額が確定した段階で契約書を作成するやり方だ。
    　予算委員会で問題を追及している保坂展人・衆議院議員（社民）によると、最高裁は１９６０年に「国が締結する本契約は、契約書の作成により初めて成立する」との判例を示している。事実なら無契約状態でフォーラムを開いていたことになる。
    　電通から最高裁への「請求書」（２００６年４月４日）の金額３億４１２６万８９００円と、「見積書」「契約書」の金額がピッタリ一致していることも「さかのぼり契約」だったことを裏付けている。
    　最高裁自ら、最高裁判例に違反する不正を行っていた疑いが濃厚──こんな重大ニュースにもかかわらず新聞各社は報道に消極的にみえる。全国紙・有力地方紙など２７紙が検索できるデータベース（G-Search）で調べたところ、報道しているのは『朝日』『毎日』『北海道』『東京』『中日』『中国』『熊本日日』の７誌だけだった。
    　記事の文字数も『朝日』が６００字を超えているほかは３００字〜４００字程度と短い。地方紙の多くが、自ら主催者として開催した事業に関わる不正だからか、扱いに苦慮しているようにみえる。契約の一方が、巨大広告代理店「電通」であることも影響していそうだ。
    　こんな体たらくでは、広告と抱き合わせで編集記事を掲載したこととあわせ、新聞への読者の信頼が大きく揺らぐことになりかねない。
    ●３社の見積額がぴたりと一致
    　しかも、このフォーラムをめぐる最高裁と電通の契約には新たな疑惑も出て来た。先述したようにこの契約は「企画競争」で競われ、最高裁は上限額として３億５０００万円を示したという。保坂議員が最高裁から入手した資料によると、各社の企画提出時の見積額は次の通り。
    　▼時事通信社　３億４９４１万６９５３円
    　▼ＮＴＴアド　３億４９６５万００００円
    　▼第一印刷所　３億４９６５万００００円
    　▼廣告社　　　３億４９６５万００００円
    　▼電通　　　　３億４１２８万６７５０円
    　５社とも上限額に近い金額を見積もっているが、そのうち３社は１円単位まで同額。前出の小池・最高裁経理局長は２月１９日の衆議院予算委員会で「金額がどうして一致してるか承知しておりません」と答弁したが、きわめて不自然だ。
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    しかも、こうして作られた最高裁による新聞広告には「広告」との表記がないので、新聞の読者は、“広告”と気づかないまま、考えを誘導される危険がある、という最悪のオマケ付き。総合的に電通の罪は重いですね。
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  • 国鉄闘争勝利で人間を取り戻す（P28-、座談会「国鉄からＪＲへ　２０年目の検証」）
    司会　これからどういう運動が必要だと思いますか。
    唐澤　ＪＲ東日本では一層の効率経営のために「ニューフロンティア２００８」という中期構想を打ち出し、従来の「駅のあり方」を変えるとしています。大駅の契約社員導入や中小駅の窓口の閉鎖・機械化・無人化です。地域利用者は、非常に困惑しているし、自治体も抗議し始めています。
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    最近、電車内で倒れた方が次の駅でホームに降ろされて、駅員が到着するまでしばらく時間が掛かる──という場面に３〜４日連続して遭遇しました（ＪＲ東日本です）。すでに、ホームに駅員がいなくなって久しいですが、これ以上駅員を減らしたら利用者の安全は確実に犠牲にされるでしょう。「死ななくて済んだのに、死んでしまった」とか「対処が早ければ、ここまで悪化しなかったのに…」という事例が増えることを危惧します。