2007年 7月 31日（火）

• 従軍慰安婦問題：米下院決議採択　歴史認識、続く摩擦　米社会、日本へ疑念根強く（毎日新聞・夕刊）
  　【ワシントン及川正也】いわゆる従軍慰安婦問題をめぐる対日謝罪要求決議が初めて米下院本会議で採択されたことは、米国内に日本の歴史認識への懸念が高まりつつあることを浮き彫りにした。火付け役は韓国系団体だったが、人権に敏感な米国で注目を集めた。日米間の歴史認識のズレは今後も両国の摩擦要因としてくすぶり続けそうだ。 …
  　今年１２月には１９３７年の南京事件から７０年を迎える。７月１２日付の米紙ワシントン・ポストには慰安婦決議を支持する広告が再び掲載され、協賛団体には「日中戦争史実保全連合」や「『レイプ・オブ・南京』賠償連合」の名前が並んだ。広告は「歴史修正主義者の空想からはよい将来は生まれない」と主張。米国内の中国人系社会が反日運動を展開する恐れもある。…
  ●米下院決議の骨子
  　米下院本会議が３０日に採択した、いわゆる従軍慰安婦問題の対日謝罪要求決議の骨子は次の通り。
  一、従軍慰安婦制度は日本政府による強制的な売春である。
  一、日本政府は、この問題について明瞭（めいりょう）かつ明確な方法で公式に認め、謝罪すべきだ。
  一、日本政府は元慰安婦への国際社会の声に耳を傾ける必要がある。
  一、日本の一部の教科書や公職者が問題を軽視している。
  一、日米同盟はアジア太平洋地域の安定と繁栄の基礎である。
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  「ウソ情報を流すことで自ら苦境を招く右派」（2007年 7月 1日）の続報です。米議会は日本の現状をかなり詳しく把握しているようですね。
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• 『週刊金曜日（07/7/27）』より。
  • 防衛省による税金の無駄遣い（P5、金曜アンテナ「防衛省技研は金銭感覚マヒ？　“会場費”が3日で339万円」）
    　防衛省技術研究本部（技研、安江正宏本部長）が昨秋開いた研究発表会で同省共済組合経営のホテルを利用した際、339万円もの会場費を支払っていたことが発覚した。
    　問題の契約は昨年9月、技研と防衛省共済組合が経営するホテルグランドヒル市ヶ谷（東京都新宿区、防衛省に隣接）との間で、随意契約として締結された。同年11月9日、10日の2日間にわたる研究発表会の会場として大広間「瑠璃の間」（最大で約500人収容）を使用し、「会場等借上費」として 339万2235円を支払うとの内容だ。
    　研究発表会は毎年開かれており、「技術研究本部のメーンイベント」。一般公開の企画だが、聴衆の約半数は自衛隊関係者という。いわば身内の行事としての性格が強い。防衛省庁舎の中にも大ホールなど会議ができる施設はあり、そこを使えば会場費はかからない。仮に外部施設を使う必要があったとしても、問題はその価格である。ホテルが定めている「瑠璃の間」の基本料金は1時間13万2000円で、午前9時以前と午後5時以降は時間外として5割増となる。自衛隊員の利用に対しては大幅な割安制度がもうけられており、割引価格が339万円なのだという。
    　それにしても高いではないか、と調べるうちに意外な事実がわかった。研究発表会が開かれたのは2日間なのに、前日の11月8日から3日も借りているのだ。しかも前日と初日は、それぞれ使用料がかさむ時間外4時間を含む計12時間も使用、1日あたり141万円（うち時間外料金が87万円）を費やしている。
    　前日も借りた理由について技研は「リハーサルや準備のために前日も会場を押さえた」という。だが、オーケストラのコンサートならまだしも、研究チームがそれぞれプロジェクターを使って発表する催しである。「金額にも驚くが、学会で会場を借りてリハーサルなど聞いたことがない」と国立大工学部の元教授はあきれる。
    　発表会の会場費に340万、リハーサルだけで141万円とは税金の無駄遣いではないのか――取材に対し技研企画課の回答はこうだ。
    「発表会は広報活動の一環で一般の方が対象。警備保安上の観点から防衛省施設は使えない。リハーサルは映像の不具合などを点検するため必要。時間外料金は、設置機材を夜間、会場に置くために発生したものでやむを得ない」
    　今年度の技研の予算は1563億円。他の使途はどうなっているのか、気になる。（三宅勝久・ジャーナリスト）
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    これは氷山の一角でしょうね（笑）。
    税率を上げる前に、こうした「役人による税金の無駄遣い」を徹底的に調査すべきですね。そして国民の間で情報を共有しましょう。 無駄遣いを止めさせれば、税率を下げることすら可能になるのではないでしょうか。
    これは現代日本のジャーナリストにとって極めて重要な仕事となるはずです。
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  • 原発事故と東京電力と安倍首相（P22-、明石昇二郎「東電柏崎刈羽原発「震災事故」　危機管理能力欠如が露呈　波打つ路面、活断層の衝撃」）
    　ところで、同原発では平日、約１０００人もが働いているという。だが事故当日は休日だったため、１２０人ほどしか勤務していなかった。原発を救った消防隊員と同様、休みを返上して原発に駆けつけた職員は果たしてどれほどいたのだろうか。言うまでもなく「放射能」は休日だからといって容赦してはくれない。
    　危機管理意識の欠如は、同社の広報対応にも見られる。被災当初、「放射能漏れは確認されていない」とされたが、漏れていたことが後に判明。その上、海に放出した放射能量を少なく見積もって発表する。２日後に訂正された数値は１.５倍に跳ね上がっていた。
    　低レベル放射性廃棄物の入ったドラム缶が破損した件でも、稚拙な広報を繰り返す。当初「ドラム缶約１００本が転倒し、うち数本のドラム缶の蓋が開いている」としたが、これまた２日後には、「ドラム缶数百本が転倒し、うち数十本のドラム缶の蓋が開いている」と訂正。この広報対応のまずさは、９５年１２月の旧動燃「もんじゅ」ナトリウム火災事故の際、エリート集団だった動燃が「ウソつき動燃」とまで揶揄されたことを思い起こさせる。
    　だが、問題があるのはなにも東京電力ばかりではない。９９年９月のＪＣＯ臨界「被爆死」事故の反省に基づいてつくられた原子力災害対策特別措置法（特措法）によれば、原発での事故発生時には首相を本部長とする「原子力災害対策本部」が首相官邸に設置されることになっており、一方、現地には緊急事態応急対策拠点（オフサイトセンター）が直ちに設置される手筈になっている。現地のオフサイトセンターと本部の間には、迅速な情報の共有を図るための最新テレビ会議システムも完備。関係機関が連携し、的確な応急対策が行われる──とされる。
    　だが、今回の「本番」では、せっかくのこのシステムもまったく生かされることはなかった。本部長となる可能性もあった安倍晋三首相自らが、事故の全容も把握できていない時点で、なんと現地にヘリコプターで乗り込んでしまったのである。
    　柏崎刈羽原発では０２年１１月、国や新潟県、市町村、防災関係機関及び原子力事業者などがオフサイトセンターの「柏崎刈羽原子力防災センター」に集まり、緊急事態応急対策の合同訓練を実施していた。しかし「本番」がこれでは、訓練をした意味などまったくなくなる。
    「私がこの目で状況を把握して皆様に安心していただきたい」
    　というのが、安倍首相の意図だったようだ。だが、はるばるやってきた安倍首相には肝心の「放射能漏れ」情報は伏せられ、変圧器火災に至っては、案内役の原発所長から
    「安全機能は働いています」
    　と、デタラメな説明を受けている。だが、安倍首相はそれを真に受け、本人だけがすっかり「安心して」東京に舞い戻っていた。
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    悪い情報を小出しにする体質（日本の官僚的体質？）は、どこから来るのでしょうね。

2007年 7月 30日（月）

• 参院選：党派別当選者数（毎日新聞・夕刊）
  

  	合計	選挙区	比例代表	参院新勢力	公示前
  自民	37	23	14	83	110
  民主	60	40	20	109	81
  公明	9	2	7	20	23
  共産	3	0	3	7	9
  社民	2	0	2	5	6
  国民	2	1	1	4	4
  日本	1	-	1	1	1

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• 民主、首相退陣を要求　衆院早期解散へ揺さぶり（毎日新聞・夕刊）
  　民主党の鳩山由紀夫幹事長は３０日午前、東京都内で記者団に対し、安倍晋三首相が続投する意向を示していることについて「国政選挙は現政権に対する信任選挙だ。国民は安倍政権を信任していないという強いメッセージを届けた」と述べ、早期退陣に追い込む方針を強調した。民主党は今後、第１党となった参院での国会運営を軸に政権に揺さぶりをかけ、早期の衆院解散・総選挙を目指す。他の野党も安倍内閣の退陣要求で足並みをそろえ、政権を追い込む構えだ。
  　共産党の志位和夫委員長は「結果を重く受け止め、当然退陣すべきだ」、社民党の福島瑞穂党首も「首相は本来は退陣すべき事態だ」とそれぞれ強調した。
  　民主党の菅直人代表代行は３０日のテレビ番組で「年金流用禁止法案を参院で出して通す。それを衆院で与党が反対できるのか」と述べた。与党惨敗の主因となった年金問題をテーマにすれば、与党が圧倒的多数を占める衆院でも揺さぶりをかけられるという戦略だ。党幹部は「首相が続投すれば支持率は下がり続け、自民党はガタガタになる。安倍首相で総選挙になれば国民はもっと批判する」ともくろむ。
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  この期に及んでなお安倍晋三首相は辞めたくないと主張しているようですが、 その鈍感さ（空気の読めなさ）が今回の自民党歴史的大敗の原因の１つであることにまだ気付いていないようです。本当に世間知らずの「おぼっちゃま」で、子どもの頃から甘やかされて育ってきたのでしょうね。やることなすこと全て裏目に出る安倍晋三ですが、このままズルズルと続投し続けて、国民の自民党への支持率をさらにズルズルと下げていただくのも一興かと…（笑）。
  自民党の幹部は、大臣の暴言や政治とカネの問題が敗因だと言いたいのでしょうが、そんなのは今回の参院選に始まったことではなく、自民党が年中さらしている醜態でしょう。今回の「独自色」は、「消えた年金（しかも自民党は民主党のせいにした）」「強行採決１７回（議会制民主主義の否定）」「首相が安倍（格差社会推進の象徴）」といった点にあり、言うまでもなく民意の本質は「安倍自公政権の不信任」にあります。当然、安倍辞任＆解散＆総選挙を望みますが、いずれにしても今回の参院選だけで「選挙に弱すぎる安倍」を印象づけることにはなりました。
  さて、今回の参院選では地方の１人区でも民主党は強さを発揮しましたね。衆議院の小選挙区でも勝てそうな勢いです。「政権交代のために小選挙区制を！」と訴えて選挙制度を強引に変えてしまった自民党の諸君は今回の結果を喜ばなければいけませんね（笑）。
  もっとも民主党の中にも「『ワシントン・ポスト』に、日本軍による「従軍慰安婦」の強制を示す歴史文書はないと訴える全面意見広告を出した」という国際的に恥ずかしい活動をしている実に迷惑な国会議員がいるのは事実ですから、あまり信用しない方が良いと思いますが、本当に「国民の生活が第一」と考えるのであれば、イラクからの自衛隊撤退も含め、まずは小泉純一郎前首相と安倍晋三首相により滅茶苦茶にされる前の日本に戻していただきたいと思います（衆参の「ねじれ」の解消後になるでしょうが、自民党・公明党による強行採決法案を全てリセットして欲しい）。 今後、自民党から様々な「工作」もあるでしょうが、ここが踏ん張りどころです。ここで少しでも国民を裏切る行動を取ると、その時こそ民主党は永久に復活する機会を失うでしょう。

2007年 7月 26日（木）

• 『週刊金曜日（07/7/20）』より。
  • 日本国憲法・第９条・秋田弁バージョン（P14、佐高信「方言の力で倒立性を撃て」）
    　戦争責任を感じて敗戦の年の８月１５日に勤めていた『朝日新聞』に辞表を出した今年９２歳のジャーナリスト、むのたけじは『戦争いらぬやれぬ世へ』（評論社）に、秋田弁の憲法９条を引く。
    「おらだ日本国民は、もう戦争はやらねごどにした。世界中が平和になるよう、万事に物ごとの道理をもどにして、けじめをつげでいぐ。まんごごろ込めてな。戦争は国権の発動？　戦するのは国家の権利、権力にもとづいている？　そんだらごと、もう許されねぇ。国ど国どの対立を始末するどって、武力で脅したり、実際に武力を使ったりする、とんでもねぇ。そんだらやり方は、おらだ日本国民は永久にかなぐり捨てるごどに決めだ。だがら、陸軍も海軍も空軍もいらねぇ。軍隊・武器一切いらね。国の交戦権？　国家にはよその国ど戦する権利がある？　そんだらごとは認められねぇ」
    　私はこの際、候補者が方言で政策を訴えることを提唱したい。方言で訴えて違和感のない人こそ、国会に送りたい人ではないか。
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    東北人以外にも分がり易くなったんでねえか？
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  • 監禁され性奴隷に　部隊が組織的に実行（P24-、糟谷廣一郎「私は「日本鬼子」の子　第３回「ここが私のいた慰安所だ」」）
    　この中で韋（紹蘭）にどういう境遇が待っていたのか。
    「捕らわれて連行された翌日、駐屯地で白衣を着て手袋をした人（おそらく軍医）に裸にされ、全身を検査されました。胸や背中に聴診器を当てるだけではなく椅子に座らされて股を開かせられ、膣になにか長いものを突っ込まれた。あとでその器具がベッドに置かれたのを見ました」
    　これはたぶん膣の拡張器だったのではないか。この証言からも拉致・監禁・強かんは偶発的なものではなく、部隊が組織的に準備して行なったことがわかる。
    　男ばかりの軍隊に婦人科の医療器具が要るはずがない。この部隊に限らず、行く先々で同様の行為がくり返されていたのだろう。「検梅」と呼ばれる梅毒検査と性病検査を兼ねていたと思われる。また感染すると兵隊の戦闘能力が消耗するので、慰安所には「突撃一番」や「鉄兜」という品名のコンドームが備えられていた。私たちはこの実物を持ってきていた。韋さんに聞いた。
    「これを見たことがありますか」
    「そう。これを使っていた」
    　当時の中国にコンドームは存在しない。「突撃一番」を知っているということは、監禁された場所が慰安所であったことの証左である。
    「自分がいた間、２つのベッドがある部屋に、もう１人の女性と一緒に閉じこめられました。日本兵がきたときは、もう１人の女性が外に出されることもあったし、日本兵２人に女性２人、あるいは日本兵３人に女性２人という組み合わせの場合もありました」
    　そういう中で、避妊具をつけずに性交した者もいたということだ。
    「将兵は星のついた戦闘帽をかぶり、後ろに日よけの布を垂らしていました。閉じこめられた初めのころは恐怖で涙も出なかった。相手を正視できませんでした。１人になったときに涙がボロボロ出ました。一緒に捕まった（私の）娘は、やっと授乳期が終わるころでした。そろそろ１人歩きをはじめていた。私が兵隊を相手にしているときに子どもが泣くと日本兵はげんこつで撲るか、飴玉をやって黙らせました」
    　監禁中は２日に１度、局部の洗浄を命令され、食事は兵隊が部屋まで運んできたという。
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    馬嶺鎮（マアリンジェン）にあった日本軍のトーチカ（防御陣地）内の慰安所（現在は廃屋になっている）の話です。
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  • ジャーナリストに人気は不要（P34、烏賀陽弘道「天上の師よ、小生はちゃんと読者に嫌われていますか？」）
    　そこからは、６１歳の先輩記者（アメリカ人ジャーナリスト、デビッド・ハルバースタム）との、くつろいだ会話になりました。そこで彼は教えてくれたのです。「ジャーナリストは人気者でなくていい。真実を述べさえすればいい。たとえそれが人々の聞きたくないことでもね」と。「ベトナム介入は間違いであり、アメリカは必ず負ける」。６３年という早い段階でそう言った彼は、世間の激しいバッシングを受けたそうです。
    「政治家は当選しなくちゃいけないからね。人気者でないといけないんだよ。でもジャーナリストにそんな必要はないね」。彼は断言しました。そしていろんなことを教えてくれた。「真実を教えてくれる友人が１０人いたら、１００万人に嫌われても俺は平気だね」「社会の主流の言うことはまず疑え。そして反駁しろ」。
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    従軍慰安婦問題のように、日本人として聞きたくないことであっても、事実である以上、ジャーナリストはありのままを伝えなければなりません。
    一方、日本人の耳に優しい言説は警戒しましょう。過去、日本人はアジアの人々に酷いことをしてきましたが、そうした歴史的事実を覆い隠すのではなく、その事実を認めた上で深く反省し乗り越えていくことは可能だと思います。このプロセスを実現することが「日本人としての誇り」に結びついてくるのではないでしょうか。

2007年 7月 21日（土）

• 『週刊金曜日（07/7/13）』より。
  • 日本政府による他の歴史的事実の否定も推して知るべし（P5、金曜アンテナ「沖縄集団自決で政府　軍命令の事例認める」）
    　沖縄戦の際に日本軍が住民に集団自決を強制したという記述が、文部科学省の教科書検定で削除された問題について、政府は3日の政府答弁書で「住民の犠牲者のうち、過去に戦闘参加者と認定されたものについて、その過程で軍命令があったとされた事例がある」と述べ、軍命の存在を認めた。鈴木宗男議員が提出した質問主意書に答えた。
    　答弁書では、「沖縄の住民のすべてに対して、自決の軍命令が下されたか否かについて、政府としては現時点においてその詳細を承知していない」としながらも、戦傷病者戦没者遺族等援護法の適用上は、住民の集団自決を強いる軍命令が下された事例を認めた。援護法を所管する厚生労働省によると、沖縄県の渡嘉敷島や座間味島などで、旧日本軍の警備隊長から住民に集団自決命令が下された事実を認定しており、同法に基づいて計572件の弔慰金を遺族に支給しているという。
    　一方、今回の教科書検定について政府は「国が特定の歴史認識を確定するという立場に立って行われるものではなく、専門的な審議の結果に基づき行われる」と専門性を強調。検定結果を「沖縄戦の実態について誤解を生ずるおそれのある表現に関して、適切に検定意見を付したものと認識している」と評価した。
    　戦争責任や沖縄戦の研究で知られる関東学院大学の林博史教授は「軍命令の事実を検定で否定するのは、旧厚生省の認定や援護行政の否定になる。専門家の判断だから立ち入らないという理屈は政府としても苦しい言い訳」と、政府答弁書の矛盾を指摘した。 （池添徳明・ジャーナリスト）
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    「沖縄戦の際に日本軍が住民に集団自決を強制した」という歴史的事実を否定しウソにまみれた歴史教科書（文部科学省検定）にしている日本政府ですが、こうした卑劣な行為を自国の被害者（沖縄の人々）に対しても平気で行うくらいですから、外国の被害者に対して行うのはそれ以上に平気なのでしょうね。
    従軍慰安婦にしても、南京大虐殺にしても、いやそれ以前に、そもそも第２次大戦時に日本がアジアの国々を侵略したことについても、自分に都合の悪い歴史的事実は認めようとしない自民党公明党政府ですが、今回の一件で「自国民の被害の歴史でさえ否定する」ことが判明したので、「日本政府による他の歴史的事実の否定も推して知るべし」と世界中に知らしめた点では価値があったのかもしれません。
    上記のニュースでも、厚生労働省は軍命令の事例を認めているにもかかわらず、相変わらず文部科学省は態度を変えていないわけですから、根本的には問題は全く解決していません。
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  • これが「慰安婦」事件を裁いた軍法会議の証拠だ（P22-、翻訳・村岡崇光「フロレス島事件 宣誓調書」）
    調書冒頭の「数字／Ｒ」はオランダ軍情報部の書類番号。［──］内はオランダの個人情報保護法による抹消人名。（　）内は訳註。…
    【資料Ｂ】24653/R
    （宣誓尋問調書、証人：［──］、２２歳、現住所：バタビア、タイピスト、１９４８年８月１７日、バタビアで作成）
    　スマランの（略）自宅に警官が来て翌日警察本部に出頭するように私に言ったのは１９４４年４月１４日だったように思います。（略）
    　行ってみると、およそ１００人の女の子が来ていて、そのうち２０人あるいは３０人がヨーロッパ人、その他に現地人、それから数名の中国人でした。警察本部の部屋で制服を着た日本人が壇上に立って日本語で私たちに話をしました。私には一言も分かりませんでしたが、続いて日本人の通訳がマレー語で話しました。マレー語で話した日本人は、病人が非常に多いので、私たちは別な建物に移って検査を受けるのだ、と言いました。私たちの中の病人は薬をもらえる、というのでした。それから私たちは全員スプレンディッドホテルに運ばれました。（略）
    　私たちはひとりひとり隣の部屋に入れられましたが、時々中から叫び声が聞こえて来ました。（略）部屋には日本人が３人いました。私が医者だと思った男性、制服の兵隊２人。医者は、ズボンを脱ぐように、他の着物はそのままでよいと私に言いました。私は机の上で横になるようにと彼は身振りで指示しました。彼がニッケルの器具をお湯に浸すのを見ました。彼はその器具を私の処女膜の間に差し込みましたが、それは非常な痛みを伴いました。それから、その器具を取り出す時は、もっと痛いでした。立ち上がることは何とかできましたが、身繕いをする時間は与えられず、別な出口から外へ出るように言われました。既に検査を済ませていた女の子たちのところへ行ってからズボンをはきました。（略）選び出された私たち２０人は引き止められることになりました。（略）私が名前を覚えているのは［──］（ここにヨーロッパ系の女性８人の氏名）で、他に現地人の女の子が［──］（現地人女性３人の氏名）、中国人の［──］、もう１人現地人がいましたが、名前を思い出せません。
    　その晩、私たちは逃げ出そうとしたのですが、出口は全部、銃で武装した日本兵が監視していました。その翌日（略）私たちは汽車でスラバヤに連れて行かれました。（略）
    　３度目に出航した時は成功して、フロレスに到着しました。その時は私たちは全部でまだ１７人でした。［──］と［──］はスラバヤで逃走し、［──］は病気で後に残ることになったのです。そこには改札みたいなところがあって、親方が座っていて、客に切符を売っていました。午前中だと１５分で１ギルダー半、午後６時から８時までは料金は２ギルダー、夜８時から９時までは３ギルダー、終夜だと１８ギルダーが料金でした。（略）
    　午前中の客が２０人、午後２人、終夜の客１人などというのはごく当たり前でした。［──］は部屋から部屋へと回って歩き、誰も入っていないと書き留めました。私は、食事は十分貰いましたが、休養はあまりできませんでした。身体を洗う時間すらないこともありました。私は体調をこわしてしまいました。サックを使わない客が多く、そのことで［──］に文句を言うと殴られました。このようにして私は、［──］から何度となくひどい扱いを受けました。（略）
    　あそこで働いていた者全員が、午前中兵隊だけ２０人、午後は２人、大抵は下級将校の相手をすることを義務付けられていました。夜は１人の将校だけというのがノルマでした。（略）
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    現在『週刊金曜日』上で連載されている本シリーズは強力ですね。
    従軍慰安婦（日本軍の性奴隷）を否定している右派の諸君は、これらの歴史的事実を否定できるかな？（自分たちに都合の悪い歴史的事実なので、せいぜい「無視」するのが精一杯でしょうけれど、真正面から反論できるものなら反論してほしいものです）
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  • 報道の真偽を大臣が判断する放送法「改正」案（P50-、丸山昇「継続審議は単なる参院選対策　成立へ虎視眈々の安倍内閣」）
    暴走する総務省に、改悪放送法という危険な武器を与えていいのか。放送の自由な言論表現を担保する放送法が、それを変質させる方向で改悪されようとしている。
    　なぜ危険な改悪なのか。「集中排除原則を崩す」「通信と放送の境界を曖昧にして規制を強化する」「ＮＨＫの番組制作や経営にまで総務大臣の容喙を許す」など、いろいろな警告が、放送関係者や研究者から発せられている。最も問題視されているのが、５３条の８に「２」として新たに設けられる以下の条項だ。
    《総務大臣は、放送事業者（受託放送事業者を除く）が、虚偽の説明により事実でない事項を事実であると誤解させるような放送であって、国民経済又は国民生活に悪影響を及ぼし、又は及ぼすおそれがあるものを行い、又は委託して行わせたと認めるときは、当該放送事業者に対し、期間を定めて、同様の放送の再発の防止を図るための計画の策定及びその提出を求めることができる》
    　これは公権力であり放送の免許権を握る総務相に、公然と放送番組を監視させ、「事実」関係や「悪影響」の判断を行わせ、さらには再発防止計画等の徴収という行政処分の発動まで認めるものだ。
    　こんな法案が通れば、報道機関としてのテレビ放送は瀕死状態に陥る。あるいは報道機関を装った政府の広報機関に成り下がるかだ。情報番組でも、次々に監視と処分の重圧に押し潰され、屍を積み重ねることになろう。ひいては民主主義社会の崩壊につながる。当然のことながら放送倫理・番組向上機構（ＢＰＯ）、民放労連、民放連会長、マスコミ研究者、日弁連など、各層各方面から強い反対の声が上がっている。
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    「国民経済又は国民生活に悪影響を」「及ぼすおそれ」があると総務大臣が考えれば放送局を処分できる、ということなので、これはもう政府にとって都合の悪い放送局を実質的に潰す（＝骨抜きにする）ことが可能になりますね。各放送局は、処分されないように、「政府や政治家の悪事を追及する報道」を自粛するでしょうから…。
    本当に次から次へと悪知恵が働きますね。＞自民党公明党政府

2007年 7月 14日（土）

• 『週刊金曜日（07/7/6）』より。
  • 「金持ちは減税、貧乏人は増税」を推進する自民党と公明党（P44-、浦野広明「「税源移譲でも負担は変わらない」の大ウソ」）
    ──今年は税源移譲でもプラスマイナスゼロだと言っていますが？
    　言っていますが、そうではない。住民税の負担が増える問題と、住民税に連動するいろいろな負担増、その被害は零細なほど大きいと言えるでしょう。
    ──定率減税も廃止……。
    　所得税の最高税率は、かつては７５％あったんですが、今は３７％。住民税も１６％の時代があった。今１０％。
    　７５→３７，１６→１０と下げたということは、金持ちの減税を変えなかったということなんですよ。９９年に定率減税が実施されたときは法人税率３４.５％を３０％にし、所得税率４０％、５０％という上の方の税率をなくして３７％にして、大きな法人と金持ちの減税。で、経済対策として定率減税（所得税２割引、住民税１５％引き）も置かなきゃならない、ということで３つの制度を作ったんです。
    　景気が良くなったからと言って、定率減税だけを廃止するのはまったくうそっぱちですよ。定率減税は恒久減税と言っていたんだから、続けなきゃいけなかった。なのに最高税率を下げちゃったのを温存したから、定率減税廃止をやらざるをえなかった。そこを批判しなければいけない。
    　本当はね、下げた税率を戻していかなければいけないんですよ。
    ──元に戻そうという意見はないんですか？
    「負担能力に応じた税制が憲法上求められる」というのは私など一部の人が言っているんだけど、今の税制論議の一番いたらない点は、憲法が登場しないこと。だから税金の面では、解釈改憲が当たり前になっているわけです。憲法が負担能力に応じた税制を定めているから、法人税であっても一律３０％ではなく、５％くらいから４０％くらいの刻みにしていかなきゃいけないんです。
    ──憲法がもし変わって応能負担の考え方がなくなると？
    　負担能力に応じた税金という場合、金額の大小で税率を変えていく累進課税の考えと、もうひとつは「勤労所得には軽く、金融所得等の非勤労所得には重く」という考え方があるんですけど、これが逆になっていくでしょうね。それから生活費に食い込むような税金をかけちゃいけないというのも、負担能力に応じた税金の大きな中身です。でも、そうではない事態が現実に進んでいるわけで、ますますそれが強化されていきます。具体的には大衆増税、税率のフラット化、累進課税構造がなくなっていく。
    　もうひとつは、社会保険料と呼ばれている年金や健康保険料、介護保険料、雇用保険料なども税としては目的税ですから、それらの負担が増えますね。医療費も自己負担部分が多くなるとか。
    　そういう全体的な収奪というか、搾取が進んでいるのが今の特徴です。… 一方では、日本経団連や官僚は、めちゃくちゃな暴利を得ている。
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    自民党・公明党が「改革」と言う時には、必ず「金持ちにとっては改善、貧乏人にとっては改悪」という結果がもたらされる、という法則があります。
    ただ、自民党・公明党は 「改革！」「改革！」と連発するだけで、自分たちにとって都合の悪い情報は覆い隠してしまいます（それにマスコミも協力してしまっています）から、あとになって多くの日本国民は「改悪」であったことに気付くわけです（気付かない場合もある）。
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  • 「民主主義への加速度」の日中比較（P46、伊藤千尋「一国二制度の下で生きるしたたかな住民たちの１０年」）
    　香港のテレビでは午後６時、万里の長城を背景に中国国歌が流れる。政府のコマーシャルだ。政府は香港市民に中国への愛国心を植え付けようと懸命なのだ。もっとも市民の多くは、ここでトイレタイムとなる。政府が統制を進める以前に、マスコミは自主規制に走る。企業は反政府的な新聞に広告を出さない。政府にたてつくと損だという発想である。このあたりは日本と似ている。
    　こうした中、政府が２００３年に言論弾圧につながる国家安全条例案を発表すると、５０万人の香港市民がデモをして撤回させた。このあたりが日本と違う。
    　経済的に豊かになった中国大陸の人々が大量に香港を観光に訪れた結果、市民意識が変わった。かつて中国本土のデモは警官が来ると逃げていたが、今や警官に立ち向かう。市民が政府の統制をはね返すようになった。
    　日本の国会で与党が強行採決を繰り返す状況を国民が黙認するなら、民主主義の進展でも日本は中国に遅れをとってしまうだろう。
    ↓
    もし民主主義についても、日本が中国に遅れをとるようなことがあれば、日本はあらゆる面で中国に完敗となってしまうでしょう。
    そのような事態に陥らないように、日本でも民主主義を実現することが大切だと思います。民主主義は国力の源です。
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  • 上からの力（メディアの報道、公的な裁判所）よりも下からの力（市民のネットワーク）の方を信じる（P54-、対談　佐藤優・山口正紀「“客観報道”の罠　なぜ『ＡＥＲＡ』記事が問題なのか」）
    山口　いま読んでいる『マニュファクチャリング・コンセント』（トランスビュー発行）、「合意の捏造」という意味ですが、この本でノーム・チョムスキーは、全体主義国家において暴力装置が果たす役割を民主主義国家ではメディアが果たしている、それがメディアの基本的機能であって、メディアが民衆を操作し、支配権力に従わせている、と書いています。ただ、チョムスキーはメディアの中にも綻びや隙間はある、それを広げて市民とつながっていくオルタナティブな活動に期待するとも言っています。僕も新聞社の中のそんな隙間で、かろうじて生き残るところがあったのだと思いました。
    佐藤　国家にも包摂されない、個人でバラバラにされない、中間的な意味での自分たちの居場所。ネットワーク、人間関係だと思うんですよ。いま大事なのはわれわれの法廷をつくることだと思うんですよ。冤罪の人たち、国策捜査に遭った人たちが語っていく。われわれの公共圏のなかの法廷はいくつあってもいいと思うんです。メディアの人もまじえた法廷、有志の人たちが集まった法廷。いくつもの法廷で判決を受ければいいと思う。そういった裁判は国家がやる裁判とは同格だと思うんですね。前科があっても復権できる。
    　二審の裁判官の高橋省吾さんに有罪だといわれることは僕にとっては、「おじさん、また仕事やってるな」というぐらいのものなんです。最近の判決でも被害者１人でも死刑判決を言い渡したようですし、「彼の論理は一貫しているな」と。だから痛くも痒くもない。公共圏のなかでテキストを読む能力のある人に、間違っていると断罪されるほうがキツイですね。
    ↓
    この考え方は面白いですね。
    政府の息の掛かった公的な裁判所だけに「判決」を任せないで、私たち市民が法廷を持ち「判決」を下せるようにすると、市民と国家権力との見解の相違もより明らかになってきます。

2007年 7月 7日（土）

• 『週刊金曜日（07/6/29）』より。
  • 自公が強行採決する理由（P13、山口二郎「参院選は岸信介の「強行採決ＤＮＡ」を葬り去るチャンス　６０年安保に匹敵する闘いだ」）
    　強行採決といえば、安倍が尊敬する岸信介を思い出す。１９６０年の安保国会において、新安保条約の承認を衆議院において強行採決した。これを機に安保反対の世論は急速に盛り上がり、市民による空前の抗議行動が起こった。強行採決は、岸の反民主的本質を現した事件であり、国民は安保条約そのものへの反対というよりも、岸が推し進める戦後民主主義の破壊を食い止めようとして、抗議デモを行なったのである。
    　安倍は、岸の議会政治観をも受け継いでいるようである。ただし、彼は自信と能力を欠いて、表面的にだけ強いリーダーシップをまねようとしている。しかし、無理を通して道理を引っ込ませることは、強いリーダーシップではなく、単なる強がりである。本当に自信を持ったリーダーなら、野党や世論の批判を謙虚に聞き、自分の考えを丁寧に説明するはずである。今の安倍政権のおたおたした傲慢さは、安倍首相の自信の欠如の表れであり、政権の弱さの反映である。
    ↓
    そうですね。まともに議論したら絶対に負けることが分かっているから、与党（自民党・公明党）は強行採決をするのですよね。
    もし本当に説得力のある説明ができるのなら、強行採決などせずに、審議を尽くしてから採決へ進むはずですから…。
    --
  • 石原都知事による五輪誘致の裏の目的（P54-、鎌田慧「移転問題に揺れる東京・築地市場（上）」）
    ベンゼンやシアン、ヒ素、水銀、六価クロム、鉛などの有害物質が、東京・豊洲の東京ガスの工場跡地から検出された。ここが築地市場の移転候補地であることから、移転に疑問の声が強まっている。食の安全・安心を守ることは行政の最優先課題だ。東京都は移転強硬の姿勢を崩さず、そこには別の狙いが透けて見える。…
    「そもそも環境にあってはいけないシアンが、４９０倍もある。そんな工場跡地に生鮮食品の市場をもっていくなど、まちがっている。食の安全が脅かされるばかりか、風評被害があっただけでもだめになります」
    と穏やかな口調でいうのは、「（株）野末」の野末誠さん（７０歳）である。 …
    　西東京の都の浄水場は東京最初の高層ビル街になった。国鉄の汐留操車場は、「国鉄の分割、民営化」の荒療治でデベロッパーに食いちぎられ、いま高層ビルが建ち並ぶ。六本木の自衛隊跡も巨大ビルと化した。東京駅八重洲側の国鉄用地跡にも、ビルが建った。いま都心に残っていて、デベロッパーに垂涎の的として、眺められているのが、築地の魚市場と芝浦の食肉市場（屠場）である。
    　築地移転の誤算は、蓋を開けてみると、移転先が食品と相容れない汚染土地だったことにある。それでもなお、都はまだ強行しようとしているのだが、都民の健康よりも利益というなら、偽装食品、偽装建築の悪徳商法のように、商業道徳に反していて、商売のプロ集団、仲卸の経営者達の憤激を買うのは当然である。
    ↓
    現在うまく回っている築地市場を無理に移転する必要性は全くありません（説得力のある理由を示してもらいたいところ）。デベロッパーとその代弁者である石原都知事は築地の土地が欲しくてたまらないのですね。
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  • 「押しつけ憲法論」の虚構を突く（P61、奥村正男「憲法作成を描いた映画『日本の青空』」）
    　安倍晋三首相をはじめとする改憲論者が今もその改憲の根拠として、占領下で押しつけられた憲法とする、いわゆる「押しつけ憲法論」。感情に訴えようとするその声に対し、この映画はＧＨＱ（連合軍総司令部）の民生局と当時の幣原喜重郎内閣の憲法作成にかかわった松本烝治国務相らと他方、民間人の「憲法研究会」のメンバーとして、ＧＨＱにその草案を提示した鈴木安蔵氏や高野岩三郎氏らの学者グループの面々との憲法草案作成に至る過程を記録に忠実に描いた作品だった。
    　鈴木安蔵氏の憲法への思いの原点は、明治期の自由民権運動に見られる、国民主権や基本的人権の思想であり、これを欧米の近代精神と重なり合う普遍性として、新しい国の憲法の柱としたいという強い思いだった。
    　これをＧＨＱの民生局の関係者が高く評価し、言うならばそれを下敷きにした形で、この国の憲法草案が完成されていった経過が実に丁寧に描かれていた。
    　先日、ＮＨＫの『日本国憲法誕生』なるドキュメンタリー映像でも、当時のＧＨＱの民生局の直接担当者だったラウエル氏がこの憲法研究会の案に感心し、これで日本国憲法作成が大きく進展する確信を抱いたと証言している。
    　こうした証言の示すとおり、この映画は今こそ「押しつけ憲法論」なる乱暴そのものの、歴史の事実に目を背けた改憲論者に対する真実の記録として、多くの皆さんに見ていただきたい。
    ↓
    １９４５年１２月２６日にＧＨＱと日本政府に提出された「憲法草案要綱」（鈴木安蔵ら憲法研究会が作成）はこちらを参照のこと。現行の日本国憲法へ多大な影響を及ぼしていることが分かります。大日本帝国憲法しかなかった時代に、日本人の手でここまで民主的な憲法草案を作り出せたのですね。
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  • かすめ取られているのは「年金」だけではない（P66、片岡伸行「金曜日から」）
    　ちょうど１年前、「小泉劇場」による「構造改革の総仕上げ」として行政改革推進法が施行され、安倍内閣に引き継がれた。今号から連載する「ニセ構造改革」で明らかになるのはそのいかさまぶりだ。
    　私たちの税金は「補助金」という名で、１０１の独立行政法人をはじめ合計１５８０法人などにばらまかれている。その額１１兆１５３６億５００万円（０５年度）。国の税収の２０％以上になる。
    　湯水のようにつぎ込まれた巨額の税金は、その天下り先企業などに流れ込み、ロンダリング（洗浄）される形で「献金」という名の“賄賂”として政党や政治家の懐に還流する。この構造自体が温存されている限り「偽造改革」なのだ。かすめ取られているのは「年金」だけではない。
    ↓
    ともかく、こうした無駄遣いを残したまま、消費税の税率を上げるなんて、とんでもない話です（さらに無駄遣いが増えるだけです）。

2007年 7月 3日（火）

• 安倍流政治の真骨頂　何でも強行採決（毎日新聞・夕刊）
  ほとんどの重要法案が与党の強行採決で成立した今国会。 多くの批判を浴びながらも、与党は「数の論理」で野党の抵抗を封じていった。これが安倍晋三流政治の真骨頂なのか。野党にも責任はないのか。参院選の公示まであと９日。強行採決という政治手法が及ぼす影響を２人の識者に聞いた。【野島康祐、遠藤拓】
  ●「強力な指導力　勘違い」（政治評論家　森田実）
  　民主主義政治における与党は、少数派たる野党を支持する国民の意思をも尊重する義務があるはずだ。にもかかわらず、安倍晋三政権は発足１年もたたずに、既に十数本もの重要法案を強行採決してしまった。ここまで与党が野党を無視したことは今まではなかった。これこそ、野党もその背後の国民も敵という、「独裁政治」に他ならない。日本の民主主義政治は今、事実上崩壊したといっていい。
  　７０年代での与党のリーダーは、野党・社会党の背後にいる国民を意識していた。だから、多数を持っていても議論を尽くし、修正を受け入れる姿勢があったし、与野党間に強行採決をなるべく少なく、との暗黙の了解もあった。ところが中曽根政権以降、この考え方がどんどん希薄になった。決定的になったのは小泉政権。議席が多数であれば何をやってもよい、との考え方に陥ってしまった。
  　今、一番悪いのはトップの安倍首相だ。乱暴なことをやれば小泉政権同様、「強力な指導力」と賞賛されると勘違いしているようだ。自民・公明両党もひどい。米ブッシュ政権や創価学会が安倍政権の背後にいるとおびえ、金縛りになっている。首相１人の意思に振り回されるのは、もはや政治集団でなく軍隊かロボットだ。造反者が出ないのは、本当にだらしがない。
  ↓
  ああ、そうか。この「分野」でも中曽根政権から日本がおかしくなったのでした。中曽根康弘元首相は、先日亡くなった宮沢喜一元首相を「戦後最高の知性をもった政治家」と評したようですが、当の中曽根は「戦後最悪の知性をもった政治家」でしたね（小泉や安倍には知性が感じられないが、中曽根にはズル賢さが感じられる）。
  中曽根→小泉→安倍の流れで、日本の民主主義政治は今、事実上崩壊した というわけです。ならば、再び日本に民主主義政治を復活させるために、とりあえず政権交代は必須ですね。民主主義を否定する強行採決が大好きな自民党・公明党には、お灸を据える意味でも、この辺で野に下ってもらいましょう。
  あと、どうでもいいけど、記事内の「安倍晋三流政治」 を「安倍晋三・流政治」ではなく「安倍晋・三流政治 」と読んでしまいました（笑）。

2007年 7月 1日（日）

• 『週刊金曜日（07/6/22）』より。
  • ウソ情報を流すことで自ら苦境を招く右派（P6、金曜アンテナ「国会議員ら米紙に「慰安婦」強制性否定の意見広告掲載」）
    　自民党、民主党などの国会議員ら44名と教授・評論家らが14日付の米国紙『ワシントン・ポスト』に、日本軍による「従軍慰安婦」の強制を示す歴史文書はないと訴える全面意見広告を出した。
    「事実」と題された意見広告には、「日本軍によって、女性が、その意思に反して、売春を強制されたことをはっきりと明示した歴史文書を発見した歴史家、歴史学者や研究機関はまだない」「逆に、女性をその意思に反して強制して働かせることのないよう民間業者に対して警告している文書が多数発見された」「日本軍に配属された慰安婦は、現在頻繁に報道されているような『性の奴隷』ではなかった。慰安婦は公娼制度の下で働いており、当時、公娼制度は世界中で当たり前であった」「慰安婦の多くが将軍よりも遥かに高い収入を得ていた」などの主張が書かれている。
    　マイク・ホンダ米下院議員が提案した非難決議に慌てたのだろうが、韓国のメディア『文化日報』によれば、同広告に対しホンダ議員側のデニス・コーン言論担当補佐官は「議員は答える価値もないものだと考え、公式論評も出さないほどだ」「広告の主張はすでに数十年間繰り返してきた嘘」と一蹴したという。同広告が「アメリカ国内の怒りを引き起して、下院の慰安婦決議案通過に加速度を付けうる」（同紙）のは必至だ。
    　この、日本の恥をさらすような広告に名を連ねているのは自民党議員が愛知和男氏、稲田朋美氏、江藤拓氏、戸井田とおる氏、林潤氏、古川禎久氏、中川義雄氏ら29名。民主党議員が河村たかし氏、松原仁氏、松下新平氏ら13名。無所属議員では西村眞悟氏と平沼赳夫氏。議員の他には、政治評論家の屋山太郎氏、ジャーナリストの櫻井よしこ氏、岡崎久彦・元駐タイ大使など。全員の名前はこちら。（本誌編集部）
    ↓
    アメリカ国内の怒りを引き起して、下院の慰安婦決議案通過に加速度を付けうる ── そして、その通りになりましたね。
    ナチスの残党が「アウシュビッツまぼろし論」の意見広告を『ワシントン・ポスト』に出したようなものですから。
    --
  • 税金は、政治家のお金ではなく、私たちのお金です（P17、日下部聡「家賃０円の議員会館が事務所で　維持費は１９万〜１０１７万円　不自然な支出は農水相の伝統か」）
    　赤城徳彦新農水相の答弁を聞き、目が点になってしまった。…
    　松岡利勝前農水相そっくりの言い回し。しかも、パーティー券の額は自身が政治資金収支報告書で公表している。それすら言わないのは、ある意味では松岡前農水相より悪質だ。…
    　政治資金には税金が含まれている。献金も政治家自身が稼いだカネではない。忙しい主権者国民は、政治家に資金を預け、政治という仕事を委託している。だからこそ、使い道はきちんと公表しなければならない。額の多寡ではなく、説明できるか否かの問題だ。
    　たとえばマンションの管理組合で、住民代表である役員が不自然な組合費支出を計上しながら「法律に従って処理しております」などという説明で済ませたら、他の住民は激怒するだろう。ところが、こと政治資金となると、「給料と同じ感覚で使っている議員が多い」（国会議員秘書）一方で、国民の側も「オイシイ思いをしやがって」という「反感」レベルに留まっている人が少なくないように思う。日本人には、政治的立場の左右を問わず、政治家は別世界の人、あるいは「お上」という感覚がまだ根強いような気がする。
    ↓
    自分のことに引きつけて考えることができると、政治的センスがより高まりますね。上記の「マンションの管理組合」の例え話は分かり易いです。
    --
  • 特攻の真実（P22、佐高信「人物メモワール68　井筒和幸」）
    『パッチギ！　LOVE&PEACE』と、ほぼ同時に石原慎太郎プロデュースの特攻映画が封切られた。それに対して井筒は、特攻に行かずに逃げまわって死んだ人もいるはずなのに、国のために純な思いで死んでいったなどと美化するのは「ゴッツイ気持ち悪い」と反発する。
    　三國連太郎や西村晃に戦争の現実をずいぶんと知らされたからである。予科練体験を持つ西村は、いつ自分の番になるかわからないと思いながら、特攻に発つ先輩たちを見送っていた。
    「気持ちのおさめようがないから、毎日、時間だけ経たないかなという感じて生きていた」
    　こう述懐する西村は井筒に、リアルな特攻の映画を作ってくれ、と言った。
    「あんなふうに敬礼して見送ったんちゃうねん、みんな日本酒飲んだり、ポン打ったりな、滅茶苦茶して行ったんや。あんなもの正気でな、突入なんてできるわけがない。ほとんど当たるのが厭で怖じ気づいて帰って来る。しかし、着陸できないから、旋回してグルグルまわって、そのうち燃料がなくなって山に墜ちたとか、そんな例がいっぱいあったんだ」
    　その西村と三國が共演した『陸軍残虐物語』は井筒にとって忘れられない作品だった。自分の父親と重なるのである。
    　２０歳で赤紙が来た息子に母親（つまり井筒の祖母）は、どうでもいいけど、あんた早う帰って来いや、と言ったという。そうしたリアリズムを井筒は大切にしたいと思うのである。
    『パッチギ！』で井筒は「逃げる」を１つのメッセージとしている。
    　若い人たちは、（石原）慎太郎みたいにワーッとやると、のせられるが、 その時に井筒は、脱走した親父を誇りに思う、親父が脱走しなければ自分は生まれていなかったと叫ばせている。
    　逃げそうにない井筒が、逃げていいと言うから、胸に響くのである。
    「いや、僕は戦争が起こったら真っ先に逃げますよ。そういう人間ですから」
    　井筒は髭面をほころばせて、こう言った。脱走バンザイである。
    ↓
    とりあえず『俺は、君のためにこそ死にに行く』（脚本：石原慎太郎）はウソ映画なので、ダマされないようにしましょう（笑）。＞皆さん
    井筒監督の方が、人間の「弱さ」を率直に見つめている点で、はるかに信頼できると思います。
    --
  • 国会崩壊（P24、辻元清美「「コイズミ─アベ路線」は終わり　参院選挙で決着をつけよう！」）
    　安倍政権は小泉政権よりタチが悪い。６月１９日の時点で、法案の強行採決が１７回。衆議院の２００７年度予算に始まり、国民投票法、米軍再編特措法、少年法など重要法案が次々と強行採決された。
    　年金特例法に至っては、強行採決をとめようとした野党委員を懲罰委員会にかけ、開催を見送ろうとした野党の委員長の不信任動議も強行採決して、強引に登院禁止の処分を決議……ともうムチャクチャだ。委員長の不信任動議可決は、なんと６０年ぶり。
    　イケイケの小泉さんのときですら、任期満了間際、共謀罪の審議はギリギリのところで踏みとどまった。もはや国会は国会でなくなっている。
    ↓
    「学級崩壊」ならぬ「国会崩壊」ですね。これが我が祖国の国権の最高機関かと思うと、情けなくて悲しくなります。
    それにしても（６月１９日の時点で）強行採決を１７回もしているとは絶句です。野党にはこの回数を前面に出して参院選を戦って欲しいと思います。
    もちろん、強行採決をしたのは、自民党と公明党です。 これら民主主義を否定する政党には国会から去って頂きたいですね。
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  • 治安悪化説が相互不信を募らせる（P44、雨宮処凛「書評　『犯罪不安社会　誰もが「不審者」？』（浜井浩一・芹沢一也＝著、光文社新書）」）
    　治安が悪化している、と言われる。犯罪が「凶悪化した」と叫ばれ、安全神話の崩壊が語られる。しかし、本当にそうなのか？　本書は刑務所勤務の経験がある著者の細かなデータと『ホラーハウス社会』著者の社会学的なアプローチで綴られる。そうして示されるのは治安悪化は神話であり、凶悪犯罪は決して増えていないという事実だ。
    　では、なぜこんなにも「体感治安」は悪化した気がするのか。著者の調査では、「日本全体で犯罪がとても増えている」と回答したのは49.8％、しかし、自分の住む地域でとても増えていると回答したのはたった3.8％だった。結局、テレビ、新聞での報道が大きいのだ。
    　最近の「子どもが犠牲になる事件が急増した」という論調もやはり誤りだ。警察庁の統計でも、９０年以前と比べ、小学生が殺害される事件は大幅に減少したまま安定している。
    ↓
    メディアに恐怖感を植え付けられた市民は、政府にコントロールされやすくなる──これはアメリカのやり方と同じです。
    軍事的にも経済的にもアメリカ依存を強めている現在の自民党・公明党政府ですが、情報操作も抜かりはないようですね。