2007年 12月 30日（日）

• 『週刊金曜日（07/12/21）』より。
  • 歴史的事実を否定することの重み・２（P5、金曜アンテナ「「慰安婦」問題解決要求　欧州議会でも決議採択」）
    　ストラスブールの欧州議会本会議で13日、日本政府と国会に対し「慰安婦」問題での決議が採択された。この日、27カ国、785人の議員の90％を超える同議会五会派からの共同決議案の審議で、各会派と、外交、女性人権の各委員会を代表するスペイン、スウェーデン、ポーランドなど7カ国の八議員による賛成演説の後に票決され、結果は賛成54、棄権3、反対0。
    　決議は、これまでに採択された米国、カナダ、オランダのそれをはるかに越えた重い内容である。日本の政府に対し「生存中の『慰安婦』制度の被害者と、亡くなった被害者の家族への賠償を効果的に履行する行政機構の設立」を、国会に対し「性奴隷制度の被害者の賠償の障害となっている現行法の不備を除き、個人の賠償請求権を認め、高齢者は優先されるべく法整備」を要請。また「日本政府は、被害者が強制的に奴隷状態におかれたことはないなどの主張を公式に論破するよう」、さらに「日本国民と政府も、全ての国の道徳的義務に添い、自らの歴史の全体を認め、『慰安婦』問題を含めた1930〜40年代の自国の行動への認識を涵養し、現在と将来の世代にこれらの歴史事実の教育をするよう要請」している。
    　決議の全文を読めば、欧州議会の議員が、国際人権法を背景に、「慰安婦」の史実と、日本の政府と国民の問題への対処の経過と現状を熟知していることがわかる。日本は、欧州連合という友好国際組織からの、厳しくも具体的な要求に直面することになった。（梶村太一郎・ジャーナリスト）
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    歴史的事実を認めない姿勢は、日本国内なら通用するのかもしれません（←そもそも、この時点で間違っている！）が、国際的には全く相手にされません。自国に都合の悪いことを覆い隠す右派のやり方は、いずれ破綻するだろうと思っていましたが、予想以上にその日は早く来そうですね。
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  • 年収の差が４千倍というニッポン格差社会の現実（P14-、雨宮処凛・北村肇「ここまで人を粗末にされ　だまってはいられない！」）
    雨宮　格差は認める人がいますが、貧困を正当化する人はいないし、生存権を否定する人もいません。だから素朴に押せば動いていくという手応えを感じました。不安定さや貧困は、フリーターの問題ではなく、資本主義のシステムの問題。いま、フリーターの平均年収は約１０６万円です。せめて「３００万円までよこせ」と訴えていますが、国際競争力の問題があるし、世界経済の連動の中で賃金は規定されているわけだから、１円だってあげることは難しい。日本国内だけで解決できる問題ではないと感じています。
    北村　いまの状況は、１割の勝ち組が９割の人たちを支配する、いわば新しい封建主義ととらえてもいいかもしれません。田中角栄の時代は、お金持ちと貧乏な人との年収の差は６.９倍くらいでした。2005年は４０００倍以上。小泉内閣になってから急速に広がりました。いまの日本は明らかに新自由主義の世界にどっぷり浸かったと言えるでしょう。いままでのニッポンは「１億総中流」のデマゴギーが流れていて、気がついたら４０００倍の差が生じていた。
    　フリーターをやっている若い人たちの親世代は、結婚して、妻は専業主婦、子どもを２人育てて車を持って、ローンで家を買ってということが当たり前に実現できた。いま、それができるのは「上流」だけです。
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    個人に対しても企業に対しても、自民党公明党政府は「金持ち優遇」（一方、貧乏人はさらに貧乏に）政策を実施してきました。現在、その政策通りの結果が出てきているわけです。参院で民主党が第一党になってから、自民党・公明党による「金持ち優遇」政策が（ほんの少しではありますが）減速しつつあります。やはり、選挙で政権交代を実現するしか、この悪政から脱せないのでは？　もっとも民主党の中にも自民党に近い考え方の人間もいますから、イマイチ信用できないのが残念なところですが…。
    格差社会では「本来、貧乏人がもらうはずだったお金」が金持ちのところに集中します。現代日本でも、お金は「有るところには有る」のです（ここ重要！）。分配方法を間違えているだけです。その分配方法を決めるのが「政治家」つまり「選挙で誰に投票するかを決める国民」なのですが…。

2007年 12月 17日（月）

• 『週刊金曜日（07/12/14）』より。
  • 歴史的事実を否定することの重み（P4、金曜アンテナ「オランダ、カナダ下院でも「慰安婦」問題謝罪要求決議採択」）
    　日本の「慰安婦＝性奴隷」問題に対する国際的非難は、原因となった「強制否定発言」をした安倍晋三前首相の辞任によっても収まるどころか、反対に拡大している。7月30日のアメリカ下院の「慰安婦問題に関する日本政府への謝罪要求決議」に続き、11月20日にはオランダの、翌週の28日にはカナダの下院で、いずれも全会一致で同様な決議が採択され、欧州議会と友好諸国に波及しつつある。
    　これらの決議に先立ち、アムネスティー・インターナショナルの招待で、韓国、フィリピン、オランダの元「慰安婦」代表の3名が、アムステルダム、ブリュッセル、ベルリン、ロンドンを訪れ、各地の議会の聴聞会や市民集会で証言をし、日本政府に対する謝罪と補償の要求を訴えた。さらに、カナダのオタワでは、市民団体の招待で中国からも元「慰安婦」が新たに参加した。
    　これらの決議採択に共通する特徴は、いずれの国会でも、日本外務省の長年の巨費を投じたロビー活動が完全に破綻したこと、また、野党の原案を基礎に与党も協議し、全会派の共同動議となり、反対意見が皆無の完全採択であったことだ。被害者たちは連続完全試合を実現したといえる。
    　ベルリンでの証言集会で、わたしの「安倍発言」への感想の問いに、オランダのエレン・ヴァン・デア・プローグさん（84歳、本誌6月22 日号「スマラン事件」の犠牲者）は「彼は大嘘つきだ。電話をしてくれば、納得が行くまで事実を教えてあげます」、また韓国の吉元玉さん（80歳）は「彼は若く加害者の世代ではない。だが、あったことを無いと主張するのは許せません」と声を大にした。
    　おざなりな日本のメディアの報道とは違い、韓国や中国の記者たちは、彼女らの悲惨な体験の証言に落涙する議員もいたと現場の背景を報じている。特に、オランダの国会決議は、この問題の当事者国のものであり、極めて明瞭な内容であるため要旨を挙げておく。
    「日本が先の大戦で強制売春制度を導入し、いわゆる慰安婦に苦痛を加えた史実には一切疑義を呈することはできないし、それは許されない。日本政府は河野談話で苦難と責任を認めたにもかかわらず、安倍晋三前総理大臣は国会発言で、国会議員らは『ワシントン・ポスト紙』の意見広告で、談話から逸脱する立場を表明した。また、アジア女性基金は一定の補償を試みたが、これは基本的に私的基金である。そこで、下院はオランダ政府に対し、日本政府に以下3点を断固として要求することを要請する。
    　日本政府は、談話を逸脱する立場を二度と取らず、強制売春制度の全面的責任を取ること。女性達の苦痛に対し、道義的かつ金銭的補償を各人に直接履行すること。日本の教科書で、『慰安婦』が嘗めた苦難と大戦中の日本の行為の史実を正確に描写するよう留意すること」
    　友好国の国会で、全会一致で総理大臣の逸脱行為が名指しで非難されて反論の余地もない日本とはいったい何なのか。13日には欧州議会本会議でも決議される予定だ。（梶村太一郎・ジャーナリスト）
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    安倍晋三や『ワシントン・ポスト』へ意見広告を載せた輩は、日本国を代表して日本国民の品位を下げていることに気付いているでしょうか？
    こういう輩のことを「売国奴」と呼ぶのですよ。
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  • 政治資金規正法改正案は、相変わらずザル法だ（P19、日下部聡「「１円以上の領収書」で政治とカネの問題を一件落着にしてはいけない」）
    　だが今回の合意では、すべての政治団体が全領収書公開の対象になったわけではない。政治家と密接に関係する業界団体や労働組合などの政治団体、あるいは選挙区支部以外の政党支部は対象外だ。
    　たとえば伊吹文明・自民党幹事長は、党京都府第１選挙区支部のほかに「党京都府明風支部」という政党支部を持つ。妙な名前だが、伊吹氏の資金管理団体「明風会」から来ているらしい。２００６年はこちらの選挙区支部の２.３倍（４３６３万円）もの献金を受けているのだが、今回の法改正案では対象外となる。
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    ほらね。やっぱり政治家は「抜け穴」を作ってるでしょ（しかも、かなり巨大な抜け穴を！）。
    いつだって、そうなんだよ。何度ダマされれば気が済むんだろう。＞日本国民
    それにしても、この問題を積極的に伝えない新聞・ＴＶは、政治家どもの味方だと思われても仕方ないですね。

2007年 12月 11日（火）

• 『週刊金曜日（07/12/7）』より。
  • 大阪高裁「教育委員会が『君が代』不起立教員に関する調査文書を作成することは個人情報保護条例違反」（P5-、金曜アンテナ「枚方市・不起立教員調査　大阪高裁が違法性認定」）
    　2002年度の入学式の国歌斉唱時に起立しなかった教職員の氏名や理由を、大阪府枚方市教育委員会が調査して文書を作成したのは市個人情報保護条例違反だとして、同市立小・中学校の教員2人が市に各100万円の慰謝料を求めた訴訟の控訴審判決が11月30日、大阪高裁であった。大谷正治裁判長は、「思想・信条などの個人情報を条例の制限を超えて収集した」と調査の違法性を認め、各10万円の慰謝料の支払いを市に命じた。
    　今年4月の1審の大阪地裁判決は、調査の目的や項目を教職員本人に明らかにしなかった市の情報収集方法だけを違法とし、各1万円の慰謝料の支払いを命じていた。
    　大谷裁判長は、市側の「情報収集は教職員に対する服務監督権限に基づくものだ」との主張について、「いわゆる思想調査も無制限に容認されることになりかねない」と述べ、思想・信条などの個人情報収集は許されないと判断。「校長に起立しなかった教職員数の報告を求めれば足り、それ以上に情報収集する必要はなかった」と指摘した。ただ、市教委による国歌斉唱時の起立などの指示の違憲・違法性は認めなかった。
    　国歌斉唱時に起立しなかった教職員の氏名情報を教育委員会が収集する問題では、神奈川県個人情報保護審査会が条例違反とする答申を出し、県教委が県審議会に「例外規定」の適用を求めている。
    　枚方市の訴訟関係者は「今回の高裁判決は神奈川の審議会の判断にも影響を与えるだろう」と期待を示している。（池添徳明・ジャーナリスト）
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    「個人情報保護」の観点から「情報収集という名の思想調査」に歯止めを掛けるのは当然として、日本国憲法の精神から「公務員が思想調査の記録を残す」ことに歯止めを掛けることはできないでしょうか？

2007年 12月 4日（火）

• 『週刊金曜日（07/11/30）』より。
  • 不休で年収１００万円！？　業界底辺の窮乏に光を（P30-、鎌田慧「日本アニメ界の報われない制作現場」）
    ●制作実費はスポンサー支払いの１６％ …
    　経済産業省の文化情報関連産業課調査によると、４年前の資料だが、テレビアニメ番組制作のためスポンサーが支払った金額は、５０００万円。このうち、制作プロダクション（元請け）に回ってくるのが、１６％の８００万円でしかない。残りの４２００万円、８４％のうち、広告代理店が１０００万円、テレビ局（キー局が１２００万円、残りの２０００万円を各地方局）が取る。
    　放送権を握っているテレビ会社は、そのほか、ＣＳ・ＢＳ放送会社、ビデオ製作会社、玩具会社、食品会社、衣料会社、ゲームソフト会社から、作品の権利料がはいってくる。虫プロやスタジオジブリなど、流行作家が自分の会社で一貫生産する制作プロダクションもそれとおなじ権利を所有している。しかし、元請けの「制作プロダクション」にはいるのは８００万円だけで、それでアニメ制作にかかわるすべての経費を支払わなければならない。
    　そこから、原画（基本となる絵）や動画（原画と原画とのあいだをつなぐ絵）を制作する、芦田（豊雄、JAniCA代表）さんのような「作画プロダクション」 、背景となる絵を制作する会社、彩色をほどこす美術会社、原画や動画に背景を組み合わせて撮影する会社、それを編集する撮影会社、さらに声優の声や音楽をいれる音声制作プロダクションなどに発注されるのだが、その経費は１０００万円から１３００万円といわれている。赤字受注ということになる。
    　この赤字方式は、アトム方式ともいわれ、「鉄腕アトム」をアニメ化するときに、手塚治虫氏がコストを安く抑え、赤字分を自分の原稿料で補填した時代からの踏襲という。それでも、著作権収入で膨大な利益があがったので問題なかった。 …
    ●新人の７割が１年以内に去る …
    　アニメ業界で働くひとは、およそ４５００人といわれている。少数の金持ちを除いた多くが苦しい生活で、ベテランでも、「時給５４０円」というのが、芦田さんが突きつけた現実である。時給計算によって、事態を認識してもらおう、という計算である。ベテランのアニメーターでも、１日に原画を２カット描くのが精一杯だという。それで収入は１日に７０００円。所要時間は、朝１０時から夜１１時まで。月に２８日はたらいて、１９万６０００円。時給換算５４０円。
    　アニメーションを現場でささえているアニメーターが生活できず、業界を去ったり、新しい才能がはいらなかったり、あるいは、生活するために粗製濫造となって質が低下している。それでなんとかしなくては、というのが、アニメとともに生きてきた、アトム世代の芦田さんがJAniCAを結成した理由である。
    　それではどうするのか。
    「経営者のあつまりである、日本動画協会が動いてくれればいいんですが」と芦田さんがいう。人材確保のためには、待遇改善、老齢化対策、社会保険、年金加入が必要だ。それにアニメーターの技術向上のための研修、１人作業で交流がないので、ネットワークづくり。市場規模年間２４００億円の売り上げがある産業である。が、このままでは、基盤から崩壊するという危機意識である。
    　アニメーターたちは、職人意識の強い、待遇を交渉するなどは、苦手なひとたちである。それで芦田さんが言い出しっぺになった。これから「全方位外交」で、スポンサーやテレビ局、出版社などと交渉する。作画制作にあと３割の予算を配分すれば、当面の問題は解決する、という。それとJAniCAが、アニメを応用する需要をつくって直接仕事を受けることも考えるという。
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    このように具体的な数字で示されると、日本のアニメ業界がいかに酷い状況か、わかりますね。
    アニメファンからアニメ制作者へ、直接お金が渡るような仕組みは作れないものでしょうか？