2009年 6月 27日（土）

• 『週刊金曜日（09/6/19）』より。
  • セブン-イレブンの独禁法違反は「弁当やおにぎりの値引き制限」だけではない（P56-、渡辺仁「セブン-イレブンの正体　鈴木敏文商法の「詐術」　鈴木会長“直属部隊”が売上金を奪いにやって来た（下）」）
    セブン-イレブンのオーナーの中でも特に悲惨なのは、「４００万円でオーナーになれる！」という甘い勧誘の言葉に乗った「Ｃタイプオーナー」だ。その実態はオーナーとは名ばかりで経営の自由がない。そのうえ地元警察まで巻き込み「告訴潰し」までやられたオーナーもいる。なぜ、こんな不法行為がまかり通るのか、真相に迫る。…
    ●「セブンが建てる」は嘘　オーナーも偽装だった …
    「わたしたちは（セブン-イレブンが大泉 専司さんから）土地だけ借りてると思っていた。セブンの研修会でも、『Ｃタイプは建物はセブンが建てるんです。Ａタイプは土地は借りても建物は自分で建てる。それでＣとＡに分かれるんです』と説明を受けた。当然、セブンが建物の３０００万〜４０００万円出したんだろう。だからチャージが高くてもしょうがないな、と考えていたんですよ」
    　ところが、とんでもない。「大泉オーナー」にすべて負担させていたのだ。このカラクリをセブン-イレブン元社員はこう解説する。
    「地主さんに、セブン店を作ると投資額はこうで家賃収入はこう、年間利回りはこうなりますよ、と提案するんですよ。それで地主に店を建ててもらって『売り主』にするわけですね。この方式だと本当のオーナーは地主さんなんです。Ｃタイプのオーナーさんが途中で辞めちゃうと建物が浮いちゃうし、（営業が）止まってしまう。だからオーナーさんに多額の違約金を要求するんですよ」
    　この方式だとセブン本部は６、７千万円と言われる投資も必要ない。リスクもない。丸儲けである。
    　何のことはない。鈴木勝は、この８年間、「雇われ店長」でしかなかったのだ。それなら経営権がないのもよく理解できるだろう。つまり、セブン-イレブンのやり方は 正真正銘の「オーナー偽装」だったのである。
    　そしてこのやり方は明らかに独占禁止法が禁ずる「欺瞞的顧客誘引」（本部による虚偽情報の提供）に該当するのだ。つまり、セブン-イレブンの独禁法違反は、いま注目されている「弁当やおにぎりの値引き制限」だけではない。加盟店勧誘から本部による「発注強要」、「送り込み」（一方的に商品を納品する）、「契約切り脅迫」、「仕入れ先開拓の圧力」などまだまだある。
    ↓
    宮城県大崎市にある、セブン-イレブン古川西館３丁目店の話。
    つまり、本来Ｃタイプはセブン-イレブンが店を建てるのだが、このケースでは地主さんに店を建てさせていた。にもかかわらず、鈴木勝さん（Ｃタイプオーナー）には「セブン-イレブンが店を建てた」と嘘をついていた。
    Ｃタイプは累進チャージ制で、店の売り上げが増えれば増えるほどセブン本部がとるチャージ額が多くなる仕組みになっている。
    たとえば、月の売上総利益が８００万円の超優良店（日販で１００万円ほど）とする。その店は累進チャージで本部の取り分が５４８万円（売上総利益の約６９％）、オーナーの取り分が２５２万円（約３１％）となる。オーナーはこの中から従業員人件費、家賃、税金などを支払う。そうすると給与所得者とあまり変わらない程度しか手元に残らない。これが日販５０万円、４０万円の店となると、夫婦あわせての年収が２００〜３００万円なのである。
    たしかに、「誰が店を建てたのか」はＣタイプオーナーからは見えませんので、「セブン-イレブンが店を建てた」と言っておけば、セブン-イレブン側に有利な条件（Ｃタイプ）で契約を結ぶことも可能になるというわけです。同じ手口で騙されている「Ｃタイプオーナー」さん、他にもいらっしゃるのでは？

2009年 6月 19日（金）

• 『週刊金曜日（09/6/12）』より。
  • メディアはブログだけではダメなんです（P17-、山中速人「メディアを考える　ヘーゲルを生んだドイツがなぜヒトラーにだまされたのか」）
    …ナチスは、ナチスの主張しか流れない国民ラジオを全国の工場に配り、みんなでそれを聞いて、グループリーダーのような人が解説しながらナチスの主張を裏付けていくということをした。だから放送を垂れ流して統制したのではなく、コミュニティの中のリーダー的存在の人がナチスに共感をして、そして人々を動員していったというのです。これを限定効果理論といいます。
    　それに 、ナチスの宣伝大臣ゲッペルスの作らせた宣伝戦略というのは、政治的プロパガンダではありませんでした。彼の作った映画作品のリストを見ると圧倒的に娯楽作品です。映像の質も非常に高いものでした。だから大衆側からすれば、ナチスは軍事産業と公共事業ですが、失業問題を解決するし、こんな面白い娯楽作品もつくってくれるということで受け入れたんです。…
    ●媒体より内容が問われる時代 …
    　現在はインターネットを使って誰もが意見を発信できますが、その中で、あふれる情報の取捨選択をして分析してくれるブロガーは、サイバースペースの中のオピニオンリーダーと言えます。とすると二段流れ理論そのもので、オピニオンリーダーは、かつては「自分の生活圏の中にいる誰か」でしたが、インターネットの中では「生活圏」が世界レベルに拡張していますから、会ったこともない人でもオピニオンリーダーになり得ます 。
    　でも、メディアはブログだけではダメなんです。なぜならブログの情報は二次情報だから。一次的情報を発信してくれる人がいないと、ブロガーも成り立ちません。 メディアが取材してデータを上げてくれない限りブロガーたちだって何も知らないままですから。その一次情報の提供を担うのは、やはりマスメディアの報道ですね。…
    　それに、自分のところで取材せずに画面にいろいろな新聞を出して読む、ということをどのテレビ局でもやっていますね。あのやり方を「新聞を使うんだったら、新聞１枚×視聴率なんだから、その分のお金払って」と新聞社が訴えたら、テレビ局は使わなくなるでしょう。ブログについても同じです。いまブロガー達は情報を無料使いしているわけだから、一次情報を持つメディアはその情報料を取ればいいんです。まだまだ既存メディアが優位ですから。
    　だから、これからは、媒体よりもコンテンツ（内容、中身）の問題だと思います。『週刊金曜日』も紙で出す方法もあるし、同じコンテンツをウェブ上で出してもいい。やり方次第で、既存メディアはいくらでも生き残ることができると思います。
    ↓
    多くの人々は、「理論」に惹かれるのではなく、「理論を解説する人」に惹かれる ── と言い換えても良いかもしれません。しかも、その「理論を解説する人」が（一見）歯切れ良く、（一見）面白く、（一見）格好良ければ、ますます「理論そのものを精査しなくなる」という傾向にあるのでは？　これは「日本はなぜ小泉にだまされたのか？」の分析にも使えそうですね。
    この記事はこれまでの諸学説をコンパクトに分かり易くまとめた力作だと思いました（ぜひ全文をお読み下さい）。

2009年 6月 12日（金）

• 『週刊金曜日（09/6/5）』より。
  • レジ袋は白で良い（P54-、青木泰「レジ袋から鉛検出　ゴミ焼却炉の重金属排ガス規制は必要だ！」）
    環境省は、大気汚染防止法で定められた重金属の排ガス規制をゴミ焼却炉には適用除外してきた。ところが、廃棄物学会（昨年１２月から廃棄物資源循環学会に改称）は機関誌の論文で、レジ袋から多量の鉛が検出されたことを報告した。レジ袋を燃やしているごみ焼却炉では、直ちに重金属調査が必要だ。
    　廃棄物学会誌で報告された京都大学の浅利美鈴准教授、酒井伸一教授ほか３名による論文「レジ袋ごみの課題と展望─その量と質の視点から」で、京都市での研究調査の結果、レジ袋１枚あたりの平均鉛濃度は、３１０ｐｐｍあることが報告された。
    ●ＥＵの規制値の約３倍鉛含有
    　これはヨーロッパの規制値１００ｐｐｍの約３倍にあたる。ちなみに日本には、直接食品を包む容器包装以外には、規制がない。
    　この平均濃度から計算すると京都市での家庭ごみ中のレジ袋４２００トン（２００６年）には、１.３トンの鉛が含有すると推定され、全国では１１２トンが焼却されたり屋外に廃棄されて環境負荷になっていると考えられると報告し、その削減策を訴えている。
    　この研究グループは、廃棄物学会の研究発表会「０８年１１月」の論文「レジ袋の鉛含有に関する追跡調査」でも同様の報告を行なっている。そこでは、鉛が着色されたレジ袋に多く含有され、使用インクの顔料に鉛を含んだものを使用しているためと指摘している。
    　また浅利准教授らは、レジ袋のほかプラスチック製の文具などの調査も行ない、レジ袋だけでなく、容器包装プラスチックや製品プラスチックにも重金属が含有していると指摘している。
    ●破綻した環境省の説明
    　この研究報告を前提とすると、レジ袋その他プラスチックごみ（以下、廃プラ）を燃やしている日本のごみ焼却施設では、重金属による環境汚染を規制する必要がある。
    ↓
    これって、実は、かなり問題なのでは？（個人的には盲点でした！）
    とり急ぎ、レジ袋の着色ならびに印刷をやめる（または安全な材料に切り替える）といった具体的な対応をすべきではないでしょうか。
    こうしている間にも、日々、焼却され続けているわけですから……。

2009年 6月 6日（土）

• 『週刊金曜日（09/5/29）』より。
  • 元防衛大学校教授が語る「日本の思考停止」（P44、孫崎享「対米外交から完全喪失した日本の思考力」）
    現在、外交関連図書の中で『日米同盟の正体』が常に販売の上位にランクされている。だが、外務省と防衛大学校を歴任した著者が同書で記した日米関係についての問題提起は、なぜかマスメディアでは黙殺されている。この事態をもたらしたのは、米国追従の果てにこの国がたどり着いた思考停止状態なのか。
    ──本書では、日米安保条約が２００５年の米軍再編の『中間報告』で、改定抜きに違う内容に変質したという重大な 事実が指摘されています。ただ読ませていただいて、安保に関してはもう賛成・反対はなく、むしろ「米国の言うことさえ聞いていればいい」のか否かという選択に争点が後退したのではないかという印象を持ちましたが。
    　おっしゃる通りです。イラク戦争を例に挙げると、私自身１９９９年から２００２年までイラン大使として赴任していましたから、当時のブッシュ政権の「大量破壊兵器」だの「テロ組織とのつながり」といった主張はおかしいとわかる。でもそれを有力な官僚に伝えても、結局「君の方が正解だろうが、日米関係が重要だから、少々問題があっても米国の戦争を支持したらいい」という返答しかありませんでした。
    ──政治もマスメディアの主流もそんな感じでしたね。
    　しかし、そうした主張がウソと分かった後、カナダの首相は「国連決議がないような戦争に軍隊を送らなかったわが国は、何と素晴らしいか」と言っている。同じように戦争に反対したフランスやドイツも、経済的にダメージを受けたわけではありません。「常に米国と一体でないと被害を受ける」といったような考え方は、誇大ではないでしょうか。あまりに長い間、こうした実利主義で経済面からしか米国との関係を考えてこなかったため、安全保障や外交についての真剣な論争が国会でもなくなったのは残念です。安保が変質しても、論議すら起きません。
    ↓
    そもそも、日本政府・自民党・公明党は、「大量破壊兵器」や「テロ組織とのつながり」がウソだったことを現在も公式に認めていないのではありませんか？
    もしウソだったことを認めると、イラク戦争の本質は「米国とその『同盟国』によるイラク侵略だった」ということになりますし、当然、その「同盟国」の中には日本も含まれますから、「自民党・公明党が日本をイラク侵略に加担させた」という事実が明らかになってしまう。その事態を自民党・公明党は絶対に避けなければならない。だから、ウソだったことを認めるわけにはいかない、という倒錯した論理。当の米国ですら「ウソだった」と一応は認めているのに、日本だけは「ウソじゃない」とどこまでも引きずっていく恥ずかしさ──。
    自らの過ちを認めず、客観的事実を敵に回すと、いつか大きなしっぺ返しをくらうでしょう。＞自民党・公明党