2009年 11月 25日（水）

• 『週刊金曜日（09/11/20）』より。
  • 弱毒性なのに強毒性の対処をして後へ引けなくなった新型インフル問題（P20-、母里啓子「それでもワクチン、打ちますか？」）
    重篤な副作用が高率で予想される新型インフルエンザのワクチン接種。国内ワクチンで未使用の成分を含む輸入ワクチンが今後解禁され、安全性への疑問は増すばかり。
    　インフルエンザ・ワクチンが効かないことは、ウイルス学者にとっては常識です。インフルエンザ・ウイルスは鼻やのどの粘膜で増殖します。ですから、血中にワクチンを打って血中で抗体値を上げても感染は防げません。しかもワクチンに使われるのは不活化ワクチンという、死んでしまったウイルス。体内に入れば一次的に抗体値は上がりますが、すぐに消えてしまう。いずれにしても、インフルエンザ・ウイルスは変異が早く、合うものは永遠に作れません。ワクチンができた頃には、変異して、違うものが流行しているのですから。
    　そもそも、インフルエンザは、温かくして休養をとっていればせいぜい３日で治る病気。治った後には多少の変異にも対抗する強力な抗体ができます。それで５年１０年とインフルエンザにかからずにすむわけです。このように、インフルエンザは「かかって治す病気」であり、ワクチンで防ぐ病気ではありません。…
    　国は、鳥由来の強毒性インフルエンザが発生した場合の新型インフルエンザ対策マニュアルを、パニックのあまり、使ってしまったのです。封じ込めが意味をなさないとわかった時点で、間違いを正し、引きかえして、通常の感染症対策として対処しなければならなかったのに、それをしないまま、危機管理対策の名のもとに、莫大な国費を使い、臨床試験もすんでいないものを含む輸入ワクチンを買ってしまいました。何がなんでも、この状況を「危機」にしなければいけなくなってしまった。インフルエンザの特需も起こり、後戻りできなくなってしまったのです。
    　国の輸入ワクチンの買い上げ費用は、なんと１１２６億円です。国産ワクチンは２５９億円。元の既定予算のワクチン買い上げ予定費用は６６億円。いったいどこからこんなお金が出てくるのか。厚労省の広報担当官は、「危機管理対策として輸入するので、財源は別」と。掛け捨ての保険だと言うわけです。「掛け捨てなら、買っても使わないという選択肢もありますね。今は危機ではないですからね」と厚労省の広報の担当官に食いつくと、「いや、強毒化するおそれもある」との答え。「強毒化するほど変異したら、ワクチンは完全に効かないじゃないですか」と私たちに言われ、厚労省の職員が自己矛盾に気付いているありさまです。
    　ワクチンを巡って、国と厚労省の迷走ぶりはひどくなるばかり。輸入するために、あわてて海外のメーカーの免責事項だけのために法律を作ったりしています。また、これまではインフルエンザ・ワクチンは妊婦に打ってはいけないとされていたのに、今回は妊婦が医療従事者に次いで優先。また、新型と季節性、両方のワクチンを同時に打ってもかまわないとするなど、今までやってきたことを平気でひっくり返しています。…
    　国産の新型インフルエンザ・ワクチンは、最初に２００人に打ったところ２人に重篤な副作用が、さらに１０月末医療従事者２万人に接種したところ、４人に重篤な副作用が出たと報告されています。これはかなり多い数字です。７７００万人に打とうとしているわけですから、仮に７０００万人に打った場合、１万４０００人に重篤な被害が出るという計算です。これでは新型インフルエンザにかかったほうがましというもの。新型インフルエンザ・ワクチンは今までの季節性ワクチンと同じと国は言っていますが、その根拠はどこにあるのでしょうか。
    　さらに、輸入ワクチンは、製造法が違う上、日本のワクチンには添加されていない、アジュバントという免疫補助剤が入っているなど、不安な要素が多いままです。
    ↓
    これは本当に酷い話。莫大な税金を使って、かえって国民の健康を危険に陥れるという愚策。新たな「薬害」問題に発展しないことを祈るばかりです。同じ号の浜六郎医師の記事によると「今期のインフルエンザ（２００９Ａ／Ｈ１Ｎ１インフルエンザ）に罹った人の中での死亡率は、例年の季節性インフルエンザによる死亡率の５分の１から１０分の１にしかすぎない。このことは、厚生労働省の担当官も認めている。重篤な病気の「世界的流行」とはとても言えない。しかも、死亡者の多くでタミフルが関係している。」とのこと。つまり、新型インフルエンザで死ぬのではなく、タミフルで死んでしまう（しかし、新型インフルエンザのせいにされてしまう）ということです。
    結局、「国は、鳥由来の強毒性インフルエンザが発生した場合の新型インフルエンザ対策マニュアルを、パニックのあまり、使ってしまったのです」これが、今回のインフルエンザ騒ぎの本質ですね。 政権が変わったのですから、「自民党・公明党政権下のインフルエンザ対策は間違いでした」と事実に基づいて科学的に説明すれば良いのに…。

2009年 11月 18日（水）

• 『週刊金曜日（09/11/13）』より。
  • 産経が危ない!!（P32、柳原滋雄「「対馬が危ない!!」キャンペーンのお粗末」）
    「対馬が韓国に乗っ取られそうだ」と言わんばかりの『産経』キャンペーンが足元から揺らいでいる。結論ありきの偏向キャンペーンに手を染めた全国紙の実態とは。…
    ●０.００６９％で買い占め？ …
    　私が対馬市役所の市長室を訪ねたのは今年６月。対馬は福岡・長崎両空港から、空路で３０分ほどの距離にある。前年３月、現職市長を破って当選した市職員出身の財部能成市長（５１歳）は取材に対しこう答えた。
    「市当局で確認できる限り、６９６平方キロの対馬の土地のうち、韓国人の所有は４万８０００平方メートルです。比率にすると、０.００６９％にすぎません。しかもこのなかには、古くからの韓国人住民の土地も含まれ、これで『買い占め』という表現は当たらないのではないかと考えています」
    　加えて、「０８年後半からのウォン安の影響で、最近はそういう話もまったく聞かない」と、取材に同席した永尾榮啓・総務企画部長ともども顔を見合わせるのである。
    　財部市長は、まるで韓国に乗っ取られかねないかのような一部マスコミの報道について、「もちろん報道の自由は尊重したいが、そうした恐れはまったくない。市民もそんなことは思ってもいない」と断言してみせた。事実、対馬市の人口は、３万６２５６人（８月末）ながら、外国人登録者数はわずか１１８人（うち韓国・朝鮮籍は６３人）にすぎない。外国人比率は０.３％（全国平均は１.７％）で、永住外国人となるとわずか３０人を数える程度だ。
    　仮に永住外国人全員に地方選挙権が付与されたところで、全人口のわずか０.０８％にすぎない人々の投票行動が大きな影響を与えるとは到底考えられない。まして「韓国による対馬の実効支配が進む恐れ」（地元市議の発言）など、事実を度外視した“杞憂”に過ぎないことは明らかだった。だが、これらの意図的な『産経』報道の影響はそれなりに大きかった。
    ↓
    『産経新聞』は『東京スポーツ（東スポ）』と同じ様なもので、書いてあるウソをウソとして楽しむものだと思っていましたが、そのウソを見抜けずに頭から信じてしまう人々も少なからず存在しているようで、そういった方々には本記事のように客観的なデータを提示するのが一番ですね。
    しかし、自分の頭で考えることを放棄している『産経』の読者には、どんなに客観的事実を突き付けても理解できないかもしれません。その一方で、どんなに荒唐無稽な「フィクション」であっても、不安や危機感を煽られると一瞬にして「理解」してしまう（笑）のは、ある種、宗教に近い要素があるように思います。

2009年 11月 10日（火）

• 『週刊金曜日（09/11/6）』より。
  • 農家だけではなく消費者も正確な情報を共有した上で農政を選択すべし（P5、谷本たかし「新政権の進退検査　戸別所得補償制度とＦＴＡ締結は矛盾していませんか？　農民組合連合会長に聞く」）
    　農業に対して、過剰な保護政策だとマスメディアは書き立てますが、欧州では国が援助するのが当たり前です。仏では、農家収入の８割が国からの援助金。今は、米国ですら農業の国家保護が当たり前になってきました。例えば、牛乳。余った乳製品は政府が買い取ってくれますし、飲用乳は、「不足払い価格制度」といって生産コストと販売価格の差額（赤字分）を政府が支払ってくれます。完全に国家管理型。民主党連立政権は、農家に対して、生産コストと販売価格の差額を国が支払う「戸別所得補償制度」の導入を検討していますが、これは元々、欧州の政策。日本にもこの政策を導入することは大歓迎です。ただ、支払い額が全国平均の固定額ですから、北海道のように大規模なところが有利になり、西日本のように小規模なところは、補償が不十分となるなど、改善を要する点が多々あります。赤松広隆農林水産相は農業に関しては素人。ただ、その素人の部分を生かした公正な農政を行なっていただきたい。政権が締結を目指しているＦＴＡ（自由貿易協定）には反対です。先のＪＡ全中全国大会で、自民党の谷垣禎一総裁が民主党の農業政策を批判していましたが、農家は政府の動向を良く見ています。民主党がそんな暴挙をやると分かれば直ぐに離れるでしょう。ただ、農協も農産物の販売事業よりも金融業に力をいれているようではダメ。本当の意味で農家のための団体になるよう、もっと生産と販売にかかわるべきです。（談）
    ↓
    日本の世論はマスメディアが作りますから、上記のような事実を正確に伝えれば、国家の基本中の基本である「食料生産」を安定化するために税金を使うことへの理解も得られ易くなると思います。なぜフランスは先進国でありながら豊かな農業国でもあるのか（食糧自給率は１００％を大きく超えます）。その理由をじっくり考えてみましょう。
    自然は人間が操作できない巨大なエネルギー系ですが、そんな自然の作り出す不安定な環境によって生産性が大きく変わってしまう農業の現実を、より多くの人々に伝えるのもマスメディアの仕事ですよ（本当は！）。「工業製品の広告費をもらった見返りに、関連企業にとって都合の良い情報を流す」という伝統的なマスメディアの構造も、もう多くの人が気付いています。そこから脱出できるか否かで、マスメディア企業が生き残れるか否かが決まると思います。

2009年 11月 4日（水）

• 『週刊金曜日（09/10/30）』より。
  • 罰せられない限り嘘をつく役人をどうコントロールするか（P10-、横田一「行政刷新会議はホントに無駄を切れるのか？」）
    　片山教授（前鳥取県知事）が知事時代に止めたのは「中部ダム」。県土木部は「護岸工事の１４７億円よりダム工事の１４０億円が安い」と事業を正当化したが、知事は「嘘を言ったら情報公開条例で罰せられるぞ。試算をやり直せ」と迫った。これに震え上がった役人が「本当はダムが２３０億円、護岸工事が７８億円でした」と改竄を認めてダム中止となった。「費用は低めに効果は水増しする」という手口を片山前知事は見抜いたのだ。
    ↓
    橋下徹大阪府知事もこの話を知っているはずなのに、府営ダムに関する再試算を命じていない。役人に優しいですね。＞橋下知事
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  • イラクで自衛隊が「米軍」と「武器」を輸送していた証拠（P23、成澤宗男「今こそ求められる「自衛隊の軍事作戦」検証」）
    　防衛省が９月２４日付通知で情報開示したイラク派遣航空自衛隊の「週間空輸実績」により、決定的な事実が判明した。日本は改憲をする前から「戦争をする国」、「戦争ができる国」として、海外で軍事活動を継続していたという事実だ。
    　もっとも昨年４月の名古屋高裁における「自衛隊イラク派兵差し止め訴訟」判決で、空自のバグダッド空輸作戦は実質的な戦争行為で違憲と断じられている。空自の活動が「対武装勢力の戦闘要員を含むと推認される多国籍軍の武装兵員を定期的かつ確実に輸送しているものであ」り、「他国による武力行使と一体化した行動で」、「自らも武力の行使を行ったと評価を受けざるを得ない行動」と見なされたからだ。
    　判決の時点では、防衛省は情報公開した資料を黒塗りにしていたため「推認」という表現が使われたが、今回の「週間空輸実績」で輸送したのは多国籍軍の軍人１万８７００人（米軍１万７０００人）で兵士の輸送が全体の７０％以上を占め、銃も５４００丁含まれていたことが判明。改めて、「武力の行使を行った」との高裁判決の正しさが証明された。
    　だが、問題はこれからだろう。憲法のみならず、それ自体違憲と批判を受けてきた「人道復興支援」などという美名を隠れミノにした「イラク特措法」にすら違反して国民を騙し、公然と空輸という名の軍事作戦を続けてきた自民・公明前政権の首相・閣僚と、自衛隊幹部の責任追及が不可欠だ。誰が憲法で「放棄」したはずの戦争に日本を加担させ、他国軍と一体化した軍事作戦を命じたかを明らかにしなければならない。
    ↓
    「週間空輸実績」が黒塗りではなくなっただけでも、自民・公明時代と、民主時代の違いを感じますね。
    自民党・公明党・防衛省が黒塗りで隠していた部分が、結局「自分たちにとって不都合な真実（＝ 国民を騙していた証拠）」だったことがバレてしまったわけで、これは非常に恥ずかしい（笑）。この１点だけを見ても、政権交代は国民のためになることが分かります。
    責任追及はこれから厳しく行われることでしょう。 自民党・公明党・防衛省は首を洗って待っていて下さい！
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  • 左派が考える北方領土問題（P45、本多勝一「何度でも言う、千島全島はロシアの侵略だ」）
    　漂流者や季節狩猟・漁労者を別とすれば、最初の千島定住原住民はアイヌ民族と考えられ、かれらは北海道から次第に北進して、千島全島と樺太とカムチャッカの南部にまで達していた。「１８世紀の初めには、列島は北海道本島の住民と同じ種族であるアイヌ族によって占拠されていたのである。」（高倉新一郎『千島概史』）
    　それが、北からのロシアと南からの日本によって次第に侵食・侵略され、１８５４年（安政元年）には日露通商条約によって、択捉島とウルップ島の間（択捉海峡）が国境とされた。幕府はこれ以南の南千島を仙台藩に警備させ、１８６９年（明治２年）になると北海道開拓使が南千島を五群に分けて統治した。そして１８７５年（明治８年）、樺太千島交換条約によって「平和のうちに全列島が日本領となった」（小学館『大日本百科事典』）
    　ところが、米・英・ソ（ロシア）三国によるヤルタ秘密協定（日本敗戦の半年前）によって、ソ連は日本との条約（日ソ中立条約）を一方的に破って千島を侵略・占領したばかりか、北海道は根室半島の延長上にある歯舞諸島と色丹島までも占領した。千島全島にしても「平和のうちに」（前述）日本領になったが、とりわけ南千島はアイヌ時代も含めて以前からの日本固有の領土であって、ロシアとは全く関係ない。だからこれは、日本敗戦のどさくさに乗じての明白な侵略である。要するにシベリア侵略の延長上にある侵略国家ロシアの素顔なのだ。
    　この侵略史は、アメリカ大陸におけるヨーロッパ人の侵略（せまく見ても合州国ワシントン政権以来の侵略）と時期も方法もよく似ている。
    ↓
    日本共産党も、北方４島だけではなく、千島全島が日本の領土だと主張していましたね。
    逆に、民主党や自民党は、４島が返還されるだけで満足できるのかな？　なぜだろう？
    --
  • 被害・加害の両方からの話を聞くと、嘘じゃないことが分かってもらえる（P50-、「被害と加害の歴史に向き合う「若い人と疑問を持つ人に観てほしい」　ドキュメンタリー映画『南京・引き裂かれた記憶』〜武田倫和監督に聞く」）
    ●元日本兵の証言に衝撃
    　とくに元日本兵の人たちですが、加害側の証言というと、なんていうか、一種の反省や懺悔の気持ちをもって、心に涙してというか、うなだれながら話すのではないかというイメージがありました。しかし、違いました。強かんの話などを当たり前のように、「みんなやっていたよ」などと、むしろ楽しそうに話す。こんな酷（むご）い体験を、よくそんなふうにしゃべれるなと。衝撃でしたね。中国人蔑視の言葉も出てきますし、一度受けた教育というのは消えないのだと思いました。
    ──河村たかし名古屋市長がどういう教育を受けたのかは知りませんが、報道によると、「３０万人」と言われる犠牲者数が「当時の南京の人口より多いので絶対違う」「誤解されて伝わっている」などと市議会９月定例会（９月１５日）で答弁したそうですね。彼が「当時の南京の人口」をきちんと調べたのかどうか分かりませんが。
    ↓
    河村市長も、そこらへんの勉強不足な右翼と同じ無知をさらけ出していますね（笑）。
    事実は、 １０９万人もいれば３０万人は虐殺可能である、ということです。否定論者は「南京市エリア（465.85km²）の中の南京城壁内（43.54km²）の中の安全区エリア（3.86km²）には約２０万人しかいなかった」と主張し、一方の肯定論者は「南京市エリア（465.85km²）には１０９万人いた」と主張しているのですが、南京市エリアにおいて日本軍に殺された人数が約３０万人なので、全く矛盾はありません。
    なお、今号の『週刊金曜日（09/10/30）』は他にも良質の記事が多く、５００円以上の価値がありました。 自信を持ってオススメします！