2019年 12月 28日（土）

• 『週刊金曜日（19/12/13）』より。
  • 「欠陥がある約束」を無理強いするな！（P28-、大森典子・弁護士「「『慰安婦』はデマ」こそデマ　強制連行を示す資料はある」）
    　1993年8月4日に発表された「河野談話」では、「慰安婦」について「本人たちの意思に反して集められた事例が数多くあり、更に、官憲等が直接これに加担したこともあったことが明らかになった。また、慰安所における生活は、強制的な状況の下での痛ましいものであった」と認めているのです。つまり女性たちが逃げられない「強制的な状況の下で」、「本人たちの意思に反して」性行為を強要されたことは事実で、これが「性奴隷」でなくて何なのでしょうか。そして、この「談話」を安倍首相は「継承する」と国会で答弁しているんですよ。
    ──「継承」どころか第１次安倍政権時代の2007年3月に、「強制連行を直接示す記述はなかった」という閣議決定までしています。
    「性奴隷」にされたこと自体が本質的な問題で、「『軍や官憲』が強制的に連れてこなければ何の問題もない」などと主張しているのは、世界中で日本の右派だけです。しかも、強制連行を「示す記述はなかった」というのもウソです。共産党の赤嶺政賢衆議院議員が国会で追及したり質問主意書を出したりしていますが、「河野談話」が発表された当日に、政府が発見した資料の概要を示す「いわゆる従軍慰安婦問題の調査結果報告」という文書も出されています。そこには、日本軍がインドネシアでオランダ人女性を連行・監禁し、売春を強要した事実を示す「バタビア臨時軍法会議の記録」も法務省関係文書として含まれているのです。それでも、強制連行を示す記述はないというウソを止めません。
    ●被害者は「合意」してない
    ──安倍首相は、15年12月の「慰安婦」問題をめぐる「合意」を守らなかったとして「韓国は約束を守らない国だ」とも批判しています。
    　これもウソです。韓国では「合意」で設立された「和解・癒し財団」からの支援金を元「慰安婦」47人中13人が受け取りを拒否したこともあり、合意に至った朴槿恵政権の交渉過程を文在寅政権が検証し、17年12月に報告書を発表しました。そこでは、「手続き上も内容上も重大な欠陥があった」とされています。つまり、被害者の意向を十分に汲み上げなかったということ。その結果、「この合意では問題は解決しない」と結論付けたのです。「合意」を守らなかったのではなくて、被害者を中心に据えた問題解決のための「合意」ではなかったというべきでしょう。
    　韓国の報告書には、「被害女性たちが一様に願うのは、自発的で心のこもった謝罪だ」とありますが、安倍首相は「合意」後に「子や孫、その先の世代の子どもたちに謝罪を続ける宿命を背負わせてはならない」と発言しています。こんな「謝罪」があるでしょうか。「河野談話」では、「慰安婦」問題について「歴史の教訓として直視し」「歴史研究、歴史教育を通じて、このような問題を永く記憶にとどめ」るという「決意」を表明しているにもかかわらずです。「合意」後にも「性奴隷ではなかった」や「強制連行はなかった」などと言っていて、とても「自発的で心のこもった謝罪」とは言えません。
    ↓
    「慰安婦」問題をめぐる「日韓合意」の問題は、本質的には、性奴隷にされた方々の気持ちが最も重要なはずです。最も理想的な形で、彼女たちが救われるように、日本政府も韓国政府も行動すべきでしょう。
    「国家間の合意があるのだから変更は認めない」などと、「手続き上も内容上も重大な欠陥があった」ことが明らかな不完全な合意でガチガチに固めるよりも、より彼女たちにとって有利な変更であるならば、どんどん変えていけば良い。その際の基準は、当事者（性奴隷の被害者）の判断だけで充分なはずです。
    日本政府・安倍自民党政権の不誠実な態度は、「手続き上も内容上も重大な欠陥があった」合意の方が望ましいように見えますね。加害国の態度として、最悪だと思います。