2006年 10月 28日（土）

• 『週刊金曜日（06/10/20）』より。
  • 何もしなくても安倍晋三の言う「再チャレンジ」は実現される予定（P60、投書：匿名希望「早くも八百長、出来レース内閣」）
    　安倍晋三首相が、2010年までにフリーターの数を2003年当時の８割まで減らすと宣言しました。「再チャレンジ」内閣……早くも志の低いことです。って言うかこの数値目標、単なる八百長でしょう。
    　フリーターの行政上の年齢制限は１５歳から３４歳まで。2003年、１５〜３４歳の人口は約3366万3000人でした。一方、2010年の同人口 は約2847万8000人以下になります（2000年の１５〜２５歳人口がこの数値を示す）。ですから、１５〜３４歳人口は2010年において、2003年時点の８４.６％程度までは自然に縮小します。
    　… 先の「８割」という目標は政策云々とはまったく関係なく、人口動態によって自動的に、ほぼ完全に達成が見込まれるものです。
    　さらにはその追い風として、団塊世代の大量退職に伴う正社員需要の拡大と、新卒採用への妄執という悪弊（今年度版『国民生活白書』によれば、正規雇用の対象を新卒者に限る企業は５２.９％）があります。この正社員需要の大半は新卒者によってまかなわれ、それがフリーター「割合」をも押し下げていく流れとなるでしょう。今のフリーターの大多数は、きっとただの中年非正規雇用者とされるだけ。
    ↓
    安倍晋三内閣らしい「政策」というか「無策」ですね（笑）。
    それでも、2010年頃になって政府は「ほら、日本は再チャレンジできる国になったでしょ」と言いそうですし、それにダマされる国民も多そうです（頭が痛いです…）。本来は、こうした冷静で具体的な指摘は、新聞・ＴＶなどが大々的に公表すべきものでしょう。政府が明らかに国民をダマしているわけだから。
    そもそも、安倍晋三の言う「再チャレンジ」がもし本当に可能になったとしても、現状の（もしくは、さらに悪化した）格差社会を維持したまま低所得者層のごくごく一部（おそらく１％未満）にそうした機会が与えられるだけで、社会全体で見た場合にはガス抜きの役割すら期待できないものです。やはり、格差社会自体にメスを入れる必要があると思います。
    --
  • 核のジャイアン米国に逆らえない弱腰外交の日本（P60、投書：大谷猛夫「北朝鮮の核実験声明　米国の実験はいいのか」）
    　… 中でも米国の要人が北朝鮮非難を繰り返しており、ライス国務長官は「北朝鮮が核実験をおこなえば、それは挑発行為だ」と述べたという。
    　これはおかしい。米国は今年になって、２月と８月の２回も核実験をおこなっているのである。自分たちのやっていることは挑発ではないのか。「自分はいいけど、オマエはだめだ」というのでは『ドラえもん』にでてくるジャイアンのようなものだ。
    　これにペコペコしている日本政府もだらしがない。私は北朝鮮の核にはもちろん反対だが、米国の核にも反対である。広島市長など米国の核実験にも抗議声明を出している。日本政府は北朝鮮には居丈高になるが、米国の核実験には何も言わない。
    ↓
    まったくその通りです。今回の北朝鮮核実験声明で、日本や韓国など核武装をしていない国は北朝鮮を非難する資格がありますが、米・英・仏・ロ・中など核保有国にはその資格がありません。自国の核をすべて廃棄してから「偉そうなこと」を言うべきでしょう。
    日本は被爆国かつ核保有国ではない稀有な立場なのですから、世界中の核実験に対して今回の対北朝鮮並みの非難声明を出しても、誰も文句は言えませんし、むしろ日本を愛する人が（外国にも）増えると思われます。かなり右派の人間でも地球上から核兵器を廃絶することに異論はないようですし、これこそ多くの国民に賛同を得られる「日本人として責任を持って行うべき仕事」ではないでしょうか。その点、広島市は立派だと思います。

2006年 10月 24日（火）

• 教員免許更新制の目的は「政治家にとって邪魔な教員を皆クビにすること」（毎日新聞・朝刊、「中川氏の発言に日教組が抗議文　本紙「討論」」）
  　自民党の中川昭一政調会長が毎日新聞の23日朝刊「闘論」で、「デモで騒音をまき散らす教員に児童・生徒の尊敬を受ける資格はない。免許はく奪だろう」などと日本教職員組合を批判したことを受け、同組合は23日、「正当な組合活動を否定し、集会・結社の自由、言論の自由など民主主義を理解しようとしない危険な発言に対し、抗議するとともに強く撤回を求める」とする文書を中川政調会長あてに送った。
  　文書では「デモ行進などの表現の自由・言論活動は民主的政治過程に参加するための不可欠なものである」とした上で、「自らと異なる考えに耳を傾けることなく、権力をもって発言を封じようとする姿勢は、政治家としてあるまじきことであり、容認できない」と中川政調会長を批判した。【高山純二】
  ↓
  分かり易いなあ、極右政治家、中川昭一（笑）。自民党・公明党は、教員免許を１０年毎の更新制にすることを狙っていますが、その目的は、これかよ（笑）。
  つまり、タテマエの「教育の質の向上」ではなく、「平和や人権や民主主義を守ることに熱心な日教組（自民党にとっては邪魔な存在である日教組）をつぶす」ために、教員の免許をはく奪できる仕組み（免許更新制）を導入したいのですね。
  そういうことであれば、これは反対せざるを得ないでしょう。
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• ネットイジメ（毎日新聞・夕刊、牧太郎「大きな声では言えないが…」）
  　昨今、子供を「イジメ」から守るのは教師の仕事、学校の仕事、教育委員会の仕事だ……という大合唱だが（「その通り」とは思うが）これには限界があるように思う。教師の能力にもよるが、荒れる教室に対処し、預かる生徒の学力はマチマチなのに「この子だけは有名校に入れてくれ」という保護者の要求に対処し、イジメを探し出し、一人一人の子供たちの「心の動き」を完全に把握するのは、もはや神業だろう。
  　やはり、保護者の「子供を観察する力」が我が子を守る最大の武器のような気もする。それでも、残念ながら、教師にも、家族にも発見されない「隠れたイジメ」が存在する。
  　ネットイジメ。
  　電子メール、携帯電話、ウェブサイトなどの電子媒体で「標的」に屈辱感、恐怖感を与えるやり方である。
  ↓
  「ネットイジメ」に関してはリンク先を参照していただくとして、最近になってワラワラと来ましたねマスコミによる「教師たたき」が。まだ牧太郎氏は節度を持った書き方をしていますが、中には露骨なイメージ操作をしている記事もあるようですね。現在、マスコミ各社は「教師イジメ」の旬のようです。
  ・国鉄の分割民営化の際には、「国鉄職員たたき」を。
  ・郵政民営化の際には、「郵便局員たたき」を。
  ・そして自民党・公明党が今国会での成立を目指す教育基本法の改悪に際しては、「教師たたき」を。
  見事なまでの、自民党政府とマスコミの連係プレイ。数十年前から、全く変わっていませんね（もうそろそろ国民も学習しても良いのでは？）。
  もちろん、本当にダメな教師もいますが、それら一部のダメ教師だけを取り上げて「一事が万事」のイメージを植え付けることで、「やっぱり教育基本法を変えなければ」というムードに持って行く。逆に言えば、そうしたマスコミによる援護射撃がないと説得力を持たない政治をしている自民党・公明党こそ刷新しなければならないはずですがね。
  大人の世界でもイジメが無くならないのに、子どもの世界でイジメを無くすのは事実上無理でしょう（教師の目の届かないところで行われる「ネットイジメ」もあるし…）。無理難題を教師にぶつけることで（解決できないことは分かっていながら）教師を叩く。政治家もマスコミも、卑怯さにかけては、ダメ教師以上ですね。
  そうそう、こういう時にこそ、「素晴らしい先生を紹介する記事」を連載する新聞はないものでしょうか。実際、尊敬できる教師は、ダメ教師よりもずっと多かったですよ（一番多いのは、その中間の「良くも悪くもない教師」でしたが … 笑）。

2006年 10月 23日（月）

• ナショナリズムは雇用不安と関係がある（毎日新聞・夕刊、対談：中島岳志・雨宮処凛「右傾化する「自分探し」」）
  雨宮　まったり生きられる人はそれでいいかもしれないけど、私にはそう生きる才能がなかったんです。
  中島　そこで雨宮さんは、大きな物語＝「団結できるもの」を求めて右翼になった。そのころをどう振り返りますか。
  雨宮　狂っていたとは思います。右でも左でもいいから手っ取り早く破壊衝動を満たしてくれるものがほしかった。ただ、右傾化しているとされる今の若い人と違うのは、当時、愛国という言葉はとてもマイナーで、反権力・反権威だったんです。愛国パンクが反抗の音楽として成り立っていた。
  中島　僕たちやその上の世代にとっては、ナショナリズムや愛国心を唱えることが不謹慎でマイナーだったからこそ、それで得られるものがあったのだと思う。でも今は、「東京裁判史観」批判や靖国参拝がメジャーになった。右翼的なヒップホップの曲が、靖国神社の作ったＣＤに入っていたり。ネット上のでの右派的な言葉も、もはやある意味メジャーで、なのに本人たちはそれを抵抗だと信じている。その流れの中で、雨宮さんは逆方向に向かっています。
  雨宮　今は左翼ですから（笑い）。アンチじゃないと私は意味を感じられないんです。ただ、フリーターから右翼になった経緯は、今の人と近いかもしれない。自分がどこにも所属していない不安感があったけど、右翼になった途端「自分も必要とされている」と思えました。
  　やはり、ナショナリズムは雇用不安と関係があると思う。今、フリーターのルポを書いていますが、彼らは自分を肯定できる要素が日本人であることしかなかったりする。あるいは、勤めていた工場が中国に移転して職を失ったのがきっかけで右派的な考えを持ったり。その人も中国人も、同じ労働者として大変な思いをしてるはずです。そこでつながれればいいなって思うけど、弱者が弱者を憎む仕組みができあがっている。もちろん、それは何も建設的なものをもたらさない。
  ↓
  スルドイですね。
  最近の右派の若者は、本人たちは突っ張ってるつもりでも、体制側（権力側）に協力させられているだけなんですよね。それなのに、彼らは全く気付いていない可能性が高いです（メディアに洗脳されている！）。国内の不満のはけ口を外国に求めるのは、歴史上どの国の権力者もやってきた（現在もやっている）ことなのですが、ちゃんと世界史を勉強していれば気付くでしょうに…。私の周囲の右派的な人間も、驚くほど世界史的知識・視点が欠落しています。学校の勉強もバカには出来ない（ダマされにくい人間を作る、という意味で自分の人生に役に立つ）良い例だと思いますよ。
  イメージ操作によって作り出された「嫌韓」も「嫌中」も（視点を変えれば「反日」も）その同じ構造の中で踊らされているだけなんですけどね。このまま「嫌韓」や「嫌中」を推し進めても、自分たちの暮らしは楽になりませんよ（笑）。＞右派の若者の諸君
  そういう、権力が用意した「ダミーの敵」ではなく、「本当の敵」に立ち向かわないと、自分の人生は好転しないし、結局は権力者の作り出した「仮想世界」から外にある「現実世界」へ飛び出せないまま人生を終えることになります。
  あと、基本的に、権力や権威にぶら下がるのって、超カッコ悪いと思うけどね、俺は。

2006年 10月 22日（日）

• 『週刊金曜日（06/10/13）』より。
  • 甘やかされて育った虚言癖の首相への処方箋（P8-、対談：魚住昭・佐高信「安倍晋三「教育改革」のおぞましさ　愛国心を押しつける「ストーカー首相」」）
    魚住　新政権が醸し出そうとしているソフトムードは、彼らが１０年以上もかけて練りに練った戦略の象徴として出てきていると僕は受け取っているのです。
    佐高　先日、例の加藤紘一実家放火事件で鈴木邦男と話した時に、なるほどと思ったのは、いまの右翼はものすごく取り残された感じを持っているということです。学者など身分を認知された右寄りの人たちが、旧来の右翼より激しいことを言っているのに警察のマークすら受けない。
    　そうすると、いままで左翼との闘争で体を張ってきた右翼はすごく取り残された感じを持っている。それが加藤紘一の実家焼き討ちというのにも表れているんだというのです。
    魚住　エスタブリッシュされた右翼と取り残された旧い右翼との二極分解ということでしょうか。
    佐高　「普通の顔をした右翼の時代」がやってきている。
    　だからこわいのは、安倍政権はすぐ倒れるという見方もあるけれど、意外にそうでもないかもしれないということです。
    ●テレビや雑誌で平気で嘘をつく
    魚住　僕はＮＨＫの番組改編問題をけっこう取材したんですけど、そのなかでびっくりしたのは、安倍さんの問題発覚後の言動です。彼はテレビや雑誌に出まくって、ありもしないことを平気で言う。
    　たとえば、『朝日新聞』の本田雅和記者が、夜遅くにいきなり安倍さんの家にやってきて、妻が「主人は風邪で寝込んでおります」と言ったのに「会ってもらえなければ取材拒否ということにしますよ」と言ったとか、インターホンを切っても延々と５分間もインターホンを押し続けたとかしゃべりまくっている。
    　取材が「夜遅かった」というのは嘘です。実際には午後６時過ぎだということは朝日新聞社の取材用の車の運行記録にも残っています。妻が「主人は風邪で寝込んでいます」なんて言ったこともない。普通に「ちょっとお待ちください」と安倍さんに取り次いでいる。
    　さらに五分間もの間、インターホンを鳴らし続けたと言うけれども、実際に取材したのは１５分間ぐらいインターホン越しに行われている。このインターホンは３分で、自動的に切れるようになっている。切れるとまた押して、向こう側が応ずればまた３分間話すという繰り返しです。
    　５分間鳴らし続けたとか、相手が出てくるまで鳴らし続けたとか、向こうが拒否しているのに無理やり話させたとか、そういうのは事実と違います。大嘘なんです。しかし、嘘の言い方が、非常にうまい。私はこんなひどい目にあったんだと同情を引きながら訴えかけるやり方ですね。あれば一種の才能です。
    佐高　いじめっ子なのにいじめられっ子。
    魚住　子どもが叱られた時には、２種類の対応があるんじゃないでしょうか。１つの型は黙りこくって、聞いているんだか聞いてないんだかわからないような対応する子。それは小泉型の人間。安倍さんは、親や大人に怒られたら、目をウルウルさせて、訴えかけるような顔して、相手の怒る気持ちを削いだり、同情を引くタイプの子どもですね。
    　そういうマスコミ対応技術は、彼の最大の危機だったこのＮＨＫ問題の時に相当効果的だったし、これからも威力を発揮するでしょう。
    　小泉さんの新自由主義政策で国民の大多数はかなり疲弊してきた。あれだけ、他人を蹴ちらかして金を儲けた奴がエラいんでしょという資本主義の論理が剥き出しになると、国民を束ねようとしても束ねられない。ところが今回の安倍さんがソフトムードでやろうとしていることがもし成功したら、国民が束ねられて本当のファシズムになる危険があると思っているのです。
    　安倍さんに対して、綿貫民輔さん（国民新党）が「小犬みたい」とからかっていたけれど、あのちょっと毛筋のいい小犬みたいな人が、あと何年か政権を担って、慈父とか国父というイメージになってきたら、その時は本当に日本は終わりだな、危険極まりないことになるという感じがします。
    ●仮想敵を据えて癒される「愛国心」
    佐高　小泉の激しい地ならしのあとにはなんでもソフトに見えてしまう。安倍の路線が成功したら、大きく固まってしまう。森喜朗のアホさ加減、小泉のいい加減さ、そして安倍のソフトな狡さでファシズムが完成する。
    　私は偏見かもしれないけれども、政治家で教育がいちばん大事という人間は信用しません。教育はもちろん大事だけれど、社会がよくなればそれにつれて少しよくなるのであって、教育だけでなんかを引っ繰り返そうというのは、たいていは統制の思想なんですよ。
    　たとえば森でも安倍でも西岡武夫なんていうのもいたけれど、自民党の文教族は見事に全員がタカ派です。年金の問題とか経済の問題とかをちゃんとやれば、それにつれて教育もよくなる。そういう分野でちゃんとしたことがやれないから不満が出てくる。それを愛国心で押さえつけようという話でしかないですよ。
    ↓
    一般に、政治家（権力者）が「教育改革」を言い出したら、その国は危険です（残念ですが末期的症状と言えます）。
    １０月２４日、自民党と公明党は、今度は国民の言論の自由を封殺するための悪法、「共謀罪法案」を強行採決しようとしてる（きっこの日記）とのことですが、「共謀罪」も「教育改革」も、「政治家や国家権力がどんな悪事を働いても、批判しない従順な国民をつくる」（つまり、政治家にとって都合の良い国民＝美しい国民にする）という意味で共通しています。
    あと、虚言癖のある安倍晋三のような人間は、自分の観念の世界に閉じこもってしまっているので、冷静に客観的事実を突き付けるのが効果的です（面倒でも、その都度、現実を突きつけるのです）。逆に周囲がイエスマンばかりになると（現状それに近い！）、現実離れした妄想の世界へ突進してしまう（誰も止める者がいない！）ので危険ですね。安倍晋三が１人で突進するのなら良いのですが、日本国民１億２千万人を道連れにされるのはゴメンですよ。

2006年 10月 16日（月）

• 安倍政権誕生で明日からの生活がこんなに変わる!!（『ＤＩＭＥ（2006/10/17）』P144-、荻原博子「デフレ克服マネー術・第68回」）
  　２００８年には消費税アップを検討するとのことですが、この「歳出削減」というのが、本気で取り組むと言っている割には抽象的。なので、「あら、やっぱり増税なのね。谷垣さんの後出しだけど」という印象です。
  　もし、本気で歳出削減をする気があるのなら、「役人の天下り禁止令」を出すくらいの大胆な政策が欲しい。毎年、役人の天下り先にバラ撒いている税金だけで６兆円（消費税２〜３％ぶん）ですから、コレをやめさせられたら、そのぶん消費税を上げずにすむのではないかと思います。
  ↓
  いやいや本気で歳出削減する気なんて無いでしょう（笑）。もし自民党に可能なら、とっくに（日本国の財政が破綻する前に）やっているはずです。
  逆に、「消費税２〜３％アップすれば６兆円の増収かぁ。５％アップすれば１０兆円の増収かぁ。おいしいなぁ…。何に使おうかなぁ…」ということは間違いなく考えているでしょうけどね。
  税額を決めるのも、税金の使い道を決めるのも、元を辿れば「有権者による投票」に行き着きます。私たちが１票を投じる時に、「自分の払う税額を決めている」「自分が払った税金の使い道を決めている」と、どれくらい意識しているでしょうか？

2006年 10月 15日（日）

• 『週刊金曜日（06/10/6）』より。
  • 民営化や民間委託の先にあるのは、サービスの向上などではない（P24-、平舘英明「「ワーキング・プア」の現実２　露呈する「小さな政府」のツケ　公共サービスを侵蝕する賃金破壊」）
    　東京都内で保育士をしている牧野義範さん（仮名・３３歳）は以前、指定管理者制度によって公設民営の保育所を運営するＮＰＯ法人に勤務していた。賃金は手取りで約１５万円。年収でも２９０万円にしかならなかった。自治体からの委託料が低額で、しわ寄せが保育士の賃金に跳ね返ったのだ。行政の責任を放棄した安上がり保育の典型である。多くの保育士が仕事に魅力を感じている一方で、牧野さんは「生活が成り立たずに辞める男性の保育士は多い」と話す。
    　彼は転職にあたって、民間企業が経営する保育所の面接を受けた。 だが、経験年数に関係なく「（賃金は）一律１６万円だ」との説明を受けた。牧野さんは「少子化が問題になっているからこそ、保育所を増やして保育士の待遇を改善させることが必要だ。生活できない賃金ではいい人材は集まらない」と強調する。
    　東京都では、公立と私立の保育士の賃金格差をなくすために、「公私間格差是正事業」という補助制度があった。しかし、石原都政で廃止となり、この３年間で １施設当たり最大１５００万円がカットされた。これによって民間保育所では賃金破壊が起きている。短大卒の初任給が約１５万円、年収も２８０万円だ。
    ↓
    「生活できない賃金ではいい人材は集まらない」（＝ サービスは低下する）のは確かにその通りですが、「生活できる賃金なのにいい人材が集まらない」のが現在の「政界」のようです。日本の優秀な人材は、どこへ流れてしまっているのでしょうか？
    あと、弱者の生活をぶっ壊す石原慎太郎・東京都知事ですが、こうした弱い者いじめの実態を広く有権者に知らしめる必要がありますね（もちろん東京都や権力べったりのマスコミ連中は隠そうとするでしょうが…）。
    --
  • 小さなことを見逃さないで（P27、新谷のり子「わたしと憲法・４１」）
    　今朝、新聞を開いたら、防衛庁が米情報機関との連携化のためにワシントンに日本大使館から独立した事務所を新設すると小さく書かれていました。 小さな記事でした。こんな重要なことがひっそりと決まってしまうのは恐ろしい社会ですね。
    　皆さんは、フランク・パヴロフの『茶色の朝』という絵本をご存知でしょうか。突然「茶色のペット以外は飼ってはいけない」という法律ができた国の変化を描いた反ファシズムの寓話ですが、大好きな絵本です。
    　ナチスに抵抗した牧師のマルチン・ニーメラーの告白もあります。「ナチスが共産主義者を攻撃したとき、少し不安だったが、自分は共産主義者でなかった。だから何も行動しなかった。次にナチスは社会主義者を攻撃した。自分はさらに不安を感じたが、社会主義者ではなかったから何も行動にでなかった。ナチスは学校、新聞、ユダヤ人等をどんどん攻撃し、そのたびに不安は増したが、それでもなお行動にでることはなかった。それからナチスは教会を攻撃した。自分は牧師だった。だから立って行動に出たが、そのときはすでに遅かった」
    　両方とも、小さなことだと思って見逃していると、取り返しがつかなくなるというお話です。
    ↓
    ナチス（ナチ党）は「国家社会主義ドイツ労働者党」と訳されますが、いわゆる社会主義ではなく、社会主義や共産主義と敵対する勢力でした（この点、戦前・戦中の日本帝国の軍国主義体制と似てますね）。が、いまだに「ナチスは社会主義だから…」という幼稚な議論を見かけることがあります。私は社会主義者でも共産主義者でもありませんが、このデマはひどい。ちゃんと歴史を勉強しましょう。
    --
  • 国会承認必要ないＢＢＣやＫＢＳの予算（P53、本多勝一「醍醐聰さんと語る「ＮＨＫ問題」１１」）
    醍醐　ＮＨＫが裁判所を使った支払い督促をしてくれば、受けてたちます。ただ、「やるぞ、やるぞ」と言うだけの場合、会としてどうするのかとは検討中です。
    　ＮＨＫのネガティブな面ばかり言ってきたのですが、少し変化もあります。
    　今年１月４日に、向こう３年間の新経営計画を出しました。その中で「ＮＨＫの事業計画や予算を国会で承認を得るにあたって、自主自律を堅持することが公共放送の生命線であるとの認識の下に全役職員が職務に当たる」と明記された。
    　昨年の新生プランだと、「誰からの」独立かがまったく示されず、ただ「自主自律」をいう非常に空虚な言葉だったのですが、この１月に出た新経営計画では「国会で予算・事業計画の承認を得るにあたり」と明記した。そこが「生命線」だと。これは評価していい。問題はどれだけ実際に履行されているかなんです。
    　個人的には、ＮＨＫ予算の国会承認制なんてもう必要ないと思っているんですけどね。
    本多　まったく私もそう思っています。本当の自主自律だったら、こんなものは不要どころかむしろ有害な制度ですよ。だからＮＨＫは真に自立すべく、この制度をやめるための具体的手続きを考えることこそ第一にやるべきなのですが……。
    醍醐　実の無いことですしね。ＢＢＣなんて１０年ごとに免許更新をする必要があり、政府に生殺与奪権を握られているわけです。
    　それほどきつい国家管理の下に置かれているＢＢＣでも、予算案の国会承認制度はない。韓国のＫＢＳでも決算は承認制ですが、予算は承認制ではない。
    ↓
    なるほど。「国営放送」や「自民党営放送」ではなく、本当の意味で「公共放送」を目指すのであれば、政治から完全に独立する必要がある、ということですね。

2006年 10月 13日（金）

• 史上まれなウルトラ右翼、核武装の考え「美しい国」で隠している（毎日新聞・夕刊、辺見庸「戦後生まれの首相へ」）
  　安倍首相は著書「美しい国へ」で、父の死後、国会議員になったいきさつにほとんど触れていない。日本の政治を知らない人が読めば、閣僚の父を失った人物は自動的に議員になれるものと錯覚するだろう。この点でも、辺見さんの矛先はメディアに向かう。
  　「親子３代にわたり国民の税金でまかなってもらっているのがいまの首相の一族。それを問題にもせず、持ち上げるメディア社会とは何なのか。皇室に男子が生まれたのをあれほど騒ぎ、それを社会現象として分析しない。天皇制の問題は大正時代や７０年代の方がもっと気軽に語れたんじゃないか」
  　そして、海外の例として、英国を挙げる。
  　「英国社会には、ブッシュのポチと呼ばれたブレア首相をはじき出す感性があった。イラク行きの軍事物資を運ぶ列車の線路にデモ隊が座り込み、メディアが支援することもあった。それくらい差がある」
  　その差はモラルにも表れる。最近、ドイツのノーベル賞作家、ギュンター・グラス氏（７８）が、１７歳のとき半年近くナチの親衛隊にいた事実を告白し、批判の矢面に立たされた。「この国には、こうした精神性やモラルがあきれるほどない。Ａ級戦犯に問われた岸信介が首相になり、その孫が平然と現れる。４７年の憲法施行式典で、吉田茂首相（当時）の音頭で集まった約１万人が『天皇陛下バンザイ』を叫んだ。その前まで約３００万人が死に、一般の人が、天皇の退位を語っていたわけでしょ。これが、戦後日本の恥の起点だと思う。天皇制は戦争や憲法施行を経ても何も変わっていない。それを踏まえずタテマエを語るところに、メディアの問題の根があるんじゃないか」
  　辺見さん自身も、日本人の抱える自己規制を感じている。「日本には英国ほど監視カメラはいらない。この国ではみな自分の中に監視カメラがある。髪の毛一本一本、神経細胞にまで入り込んでいる天皇制を自由に語れない状況がある限り、その監視カメラは消えないんじゃないか」
  ↓
  健全な批判精神は国家を運営する上でも必須なのですが、この国には批判精神を「疎んじる」あるいは「茶化す」文化は発達しているものの（2ch とかね…）、冷静で論理的な批判（当事者にとっては耳が痛いこと）を受け入れない素地があるようですね。この国は、もっと良い国になる可能性があるのに、実にもったいないことです。特に近年、「自分に都合の悪いことは聞かなかったことにする」という小泉前首相の真似をする輩が増えているような気がするのは私だけでしょうか？
  もちろん単なる「揚げ足取り」の相手をする必要はありませんが、本質的な部分を突いてきた批判には、正面から応えるべきだと思います。批判者のためではなく、自分のためです。こうして相手の批判を乗り越えていくことで、自分の持論がより強固になっていきます。途中で耳をふさいでしまえば（＝ 逃げれば）、自分は楽でしょうが、成長もそこで止まってしまいます。政治家・官僚・経営者など、権力を持っている人間にコレをやられると、影響力が大きいだけに、彼らの「説得力のない持論」に振り回される周囲の人間は大迷惑ですね。
  10月9日、北朝鮮が核実験をしたと発表しましたが（そして世界中から非難を浴びましたが）、日本が核武装するということは、日本が現在の北朝鮮と同等かそれ以下の国になるということです。世界中から非難を浴びる「美しい国」ですね（笑）。

2006年 10月 8日（日）

• 『週刊金曜日（06/9/29）』より。
  • ナベツネの“正直すぎる”歴史認識（P5、金曜アンテナ）
    　『読売新聞』は、さぞや困っていることだろう。渡邉恒雄同社会長・主筆の歯に衣着せぬ発言の数々に。…
    　まず、渡邉氏は首相の靖国神社参拝について「戦没者追悼式の意味を希薄化させる」として、「千鳥ヶ淵に参るのが正当」と述べた。
    　靖国神社については「自分は二等兵だったから、絶対、奥の社殿には入らない」「国家神道は、明治以降にできたもので、まったく権威などない」。
    　さらに「靖国神社の金儲け主義は腹に据えかねる」「遊就館も破棄すべきだ。展示物が残虐なものばかりだ」とも批判している。
    「歴史認識は共産党より左かもしれない」という渡邉氏は「最終的には国会で特別委員会をつくり歴史観を整理するのが良いが、すぐにはできそうにないので『読売新聞』でやった」という。『読売』では「検証　戦争責任」という企画を連載して出版もした。
    ↓
    ナベツネの歴史認識は、最近の『朝日新聞』よりもマトモなようですね。
    --
  • 危機感を煽ることで誰が一番得をするか？（P8-、大塚英志 vs. 前原誠司「激論　非武装中立」）
    大塚　現実には戦争はできないと前原さんもおっしゃる。その時、軍事はそんなにオールマイティーの外交カードなのですか。前原さんは現実論をおっしゃっているように聞こえるけれども、「もし北朝鮮が」というような、「もしも」を過度の前提にしゃべっている。
    前原　安全保障は仮定の話を前提にするのですよ。もしもの場合、万が一の場合に備えるために、いまの自衛隊があると多くの国民が認識しているんじゃないですか。
    大塚　だったらいかに憲法９条を徹底して国民の安全を守るかという仮定も安全保障論ではないですか。
    前原　いや、されるのは思想・表現の自由ですから、全然かまわない。ただ、私のとっているスタンスは、「戦争はしてはいけないけれども、何かがあったときにどれだけ国民の生命や財産を守れるか、日本の権益を守れるか」。ひいてはそれが日本の経済活動につながっていると思うんですよ。非武装中立にしたときに、日本のフィージビリティ（脆弱性）はどうなるのか。安全保障の問題だけではなく、日本の円、株式、為替、日本への投資などにすべてかかわるという状況の中で考えなければならない。非武装中立をとれば、いまの経済活動が維持できないということも考えなければならない。
    ●９条改憲は必要か
    大塚　それは今の日本が軍事カード抜きでもはや信用されない国家になっているから、という気もしますが。日米安保とともに憲法９条を解釈改憲することで戦後日本は機能してきたことをぼくは正しいとは思わないけど、いまになって改憲へと突っ走ろうとするのはなぜですか。
    前原　現状にあわせようということです。憲法を子どもが読んだら、自衛隊は完全に憲法違反です。ＧＨＱの憲法草案をまとめた人たちも自分たちの思想を体現するモデルを作った。日本をひとつのテストケースとした。しかし冷戦の激化で、警察予備隊とか、自衛隊を持たせるようになった。
    大塚　それは、アメリカの現在の極東戦略の意向にあわせた形での「現状」でしかない。アメリカの意向にあわせた形に憲法を変えようということでは。
    前原　アメリカの意向じゃない。私は日米安保を修正する必要があると思っているし、日本の自立性を持たないとアメリカの軍事戦略に完全に組み込まれてしまう。いまの日米関係がいいとは思っていないし、アメリカも自らの国益を実現するために日本をどう利用しようかと考えて日米関係を結んでいる。戦略的な立場に立ってアメリカともつきあわなければならない。
    大塚　でも、結果として前原さんの９条２項の削除はアメリカの軍事再編に日本が組み込まれやすくなるだけじゃないですか。
    前原　まったく関係ないですね。
    大塚　でも結果は同じです。むしろ９条があるから自衛隊と米軍の一体化がかろうじて抑止されている。９条は抑止のカードになりうる。
    ↓
    そう、「アメリカの世界軍事戦略上、日本の憲法９条は邪魔な存在である」というのは右派・左派問わず、認めざるを得ない事実です（この点は隠してはいけない）。９条改憲派がどんなに偉そうなことを言っても、現実に９条を改憲することは、結果として、米政府と米軍需産業にとって最高に嬉しい結果をもたらします。９条改憲派は「憂国の士」なのか「アメリカの手先」なのか、見ているだけでは（結果が変わらない以上）区別がつきません。
    あと、大塚氏の「今の日本が軍事カード抜きでもはや信用されない国家になっている」という指摘も重要です。日本は長らく「経済一流・政治三流」と言われてきましたが、最近はその「経済」も危うくなってきているので、なんとか「軍事」で国際的優位を保とうとしているように見えますね（改憲も、教育基本法改悪も、有事法制＝「国民保護法」も、増税も、福祉削減も、格差社会も、靖国参拝も、日の丸・君が代強制も、すべてこのための準備では？）。前原誠司は、安倍晋三らとともに新たに「日中戦争」を仕掛けようとしている らしいので、そのような視点から読んでも興味深い対談でした。
    なお、石橋政嗣氏による『非武装中立論』（1980）は、「段階的“軍縮”論」であり「… 軍事的緊張がある状態で、日本が即座にかつ一方的に軍備を放棄する主張ではないのである。そして、将来の展望として《国連が（中略）加盟各国の主権の大きな部分を分け持つ、新たな国際的権威として確立したあかつきには、公正な国際紛争処理機関として、強力な警察機能を持たせるべきだ》としている。」（編集部によるまとめ）とされています。「非武装中立」という言葉だけが一人歩きしないように、注意が必要です。
    あと、上記には引用していませんが、気になることを１点。
    トマホークの値段くらいその場で教えてあげればいいのに、大塚氏がトマホークの値段を知らないことをネタに２度も「不勉強」をなじるとは、本当に性格悪いですね（笑）。＞前原誠司
    両者が共通の知識を持った上で正々堂々と論戦すればいいのに、そうしないのは、自分の方が論理的には負けそうだから（追い詰められている）と思われても仕方ありませんね。
    国会議員は我々の税金で養ってもらっているのだから、常に「国民全体への奉仕者」であるべきなのに、どうも御自身の立場を分かってらっしゃらないようです（笑）。松下政経塾出身者には、こういう「勘違い系オレサマ政治家」が多いような気がしますが、そういう教育をしているのでしょうか？＞松下政経塾
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  • 関東複雑空域 （P32-、安田浩一「ニッポンの翼が危ない(5)　錯綜する飛行ルート」）
    　逆に西日本方面から羽田へ向かう航空機は、高度ではなく迂回ルートで横田空域を避ける。わざわざ伊豆大島上空を経由してから羽田へ機首を向けるのだ。この遠回りのせいで、最短ルートよりも９分間余分に飛ばざるを得ないという。
    　日本の航空機が自国の空で、米軍に遠慮しながら飛んでいるとは情けない限りではないか。まるで占領国の扱いである。
    　日本の主要航空各社によってつくられる定期航空協会によれば、もしも横田空域が全面的に返還されると、年間に約１１万キロリットルの燃料が節約され、飛行時間の短縮による経済効果も年間１４０億円に達するという。つまりそれだけのコストと時間が現在、横田空域のために浪費されているわけだ。
    　効率性だけではない。
    「飛行ルートが限定されることで、空の混乱を招いているのです」
    　そう指摘するのは首都圏の空を監視する航空管制官の１人だ。
    「羽田と成田の２つの大空港を抱える関東の上空は、日本でも有数の航空機過密地帯。しかも空域が狭いゆえ、常にニアミスなどの危険と背中合わせの状態です。管制官が緊張を強いられる場面は少なくありません」
    　関東上空は西側の横田空域以外にも、いくつかの空域が複雑に入り組んでいる。北側には航空自衛隊百里基地が管理する百里空域、茨城県沖の太平洋上には自衛隊の訓練空域、房総半島沖合には米軍訓練空域がそれぞれ境界線を引いている。そして軍用機が飛び交う軍事空域に挟まれるような形で民間航空機が最も集中する成田空域と羽田空域が設定されているのだ。「空の混雑」は当然の結果でもある。
    　あるパイロットは「管制官の職人芸的な交通整理で、どうにか安全が保たれている状態」だと話す。
    　しかし「職人芸」だけで対応するには、もはや限界が近づいている。
    　2009年には羽田空港で４本目の滑走路が新設され、年間の離発着数が現在の２８万回から４０万回へと大幅に増加する予定だ。成田空港でも滑走路の延伸が進んでいる。年間離発着数は２０万回から２２万回へと増えることになる。渋滞著しい狭い空域で、さらに交通量が増えるのだ。
    ↓
    こんな状況下でも、管制官の数は逆に減らされている、とのこと。
    ゼネコンを喜ばせるためだけの無意味な（というか、環境破壊や財政圧迫のために有害な）新空港建設も盛んですが、お金を落とすべき所（＝安全のため）に落とさないと、ＪＲ西日本のように 現場（お客様）が代償を払う ことになりますね。
    責任者である政治家・官僚や航空会社の上層部だけが危険な目に遭うのなら良いのですが、実際にはこうした「空の危険」は利用者全員に平等に降りかかってきます。